日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
膀胱癌の進展ならびに転移に関する研究
第2報 化学療法による術後転移の防止について
沼沢 和夫柿崎 弘渡辺 博幸高見沢 昭彦政木 貴則平野 和彦平野 順治久保田 洋子菅野 理斉藤 雅昭安達 国昭川村 俊三鈴木 騏一
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1983 年 74 巻 3 号 p. 349-356

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抄録

膀胱癌患者の膀胱全摘除術および膀胱部分切除術術後の転移防止を目的として, 術前 one shot 動注と術後経静脈性全身投与による化学療法を施行した.
術前 one shot 動注は, 術前の骨盤動脈造影の際に内腸骨動脈より Mitomycin C 12mg, Endoxan 300mg, Thiotepa 18mg, 5FU 500mgを4剤同時に one shot にて1回だけ動注を行なつた. 術後化学療法はFT2074,000~8,000mg, Cylocide 200mg, Toyomycin 20mgあるいは Toyomycin にかえて Neocarzinostatin 20,000単位を多剤併用あるいはFT207単独投与にて点滴静注により5週間で投与した.
術後1年以上経過した31例について術後転移の頻度をみると, 31例中11例 (35.5%) に転移を認めたが, 11例中10例は組織所見で癌細胞の脈管内侵襲所見が陽性であつた.
すなわち脈管内侵襲所見は31例中15例 (48.4%) に認められ, 15例中10例 (66.7%) に転移がみられた. しかし化学療法と転移との関係をみると, 15例中12例の化学療法施行例では7例 (53.8%) にみられたが, 化学療法非施行例3例では全例に転移がみられた.
また術前の one shot 動注施行では, 術後転移の発生頻度は50%であつた.
すなわち, 膀胱癌の術後転移防止の為に術前 one shot 動注と術後全身投与による化学療法が有効であつた.

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