日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
Bolus volume 測定による腎孟, 尿管機能の検討
先天性水腎症に対する術前・術後の機能評価
原田 忠森田 隆西沢 理能登 宏光土田 正義
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1983 年 74 巻 8 号 p. 1370-1382

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抄録

7名の成人先天性水腎症に対し, bolusmetry (bolus frequency, bolus volume を尿管カテーテル法によつて測定する方法) を施行し, 他の検査方法と比較した. また腎孟形成術が施行された症例においては術前術後で比較検討し, 以下の結果を得た. 1) 患側の bolus volume は乏尿時0.05±0.02mlで健側の0.19±0.07mlに比べ著しく低値であつた. 利尿剤負荷によつても同様に患側の bolus volume は健側の約4分の1程度であつた. 2) bolus frequency は尿管の peristaltic frequency と近似した値で, peristalsis を反映していると考えられた. 患側の bolus frequency は健側に比べ減少している傾向を認めたが有意ではなかつた. 3) 腎孟尿管の拡張度が強い症例では bolus volume は減少しており, 利尿剤負荷に対する反応でも不良であつた. レノグラムとは明確な関係が認められなかつた. また bolusmetry により機能的な尿路閉塞もとらえることができ, この点で Whitaker らの pressure flow study よりも優れていた. 4) 腎摘出あるいは腎瘻術を行なつた3例はいずれも腎機能の荒廃が強く, 利尿剤負荷によつても bolus volume は0.25ml以下であつた. 5) 腎孟形成術が施行された4例中3例は術後の bolus metry で利尿剤負荷時の bolus volume は増加しており, 尿輸送機能が改善されていることが判明した. 以上の結果から bolus metry は腎孟, 尿管機能をよく反映し, 特に水腎症においては, 術式の選択, および術後, 手術結果についての客観的評価の一つのパラメーターとして有用であると考えられた.

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