日本泌尿器科學會雑誌
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腫瘍マーカーを指標とした睾丸腫瘍 (Stage I, II) の治療について
守殿 貞夫荒川 創一濱見 学梅津 敬一藤井 昭男石神 襄次
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1983 年 74 巻 8 号 p. 1383-1393

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抄録

腫瘍マーカーを指標として睾丸腫瘍を体系的に治療した. 対象は, Stage I およびIIのNSGTとhCG陽性 Seminoma 計16例である. ただし, Stage II のうち有 Bulky リンパ節転移例は対象より除外した. 用いた腫瘍マーカーはAFPとhCGで, 術前はもとより術後も頻回に測定し病期診断, 再発のモニターとした. レ線検査等の診断法も平行して行なわれている. 治療の順序は, Stage I に対しては除睾術後直ちにRPLNDを施行, その後ACT-D再発予防維持療法を外来で行ない, Stage II ではBLM, VBLを投与した上でRPLNDを施行, 以後 Stage I と同様にACT-Dの cyclic therapy を行なうことを原則とした. その結果, Stage I 6例では1例も再発を認めない. Stage II 10例中4例40%に再発を認めた. これらのうち1例は癌死, 2例では化学療法により完全寛解が得られ, 1例はレ線学的に再発巣は同定し得ないが血中hCG陽性のため加療中である. これら再発4症例すべてにおいて血清マーカーの陽性化が他の異常所見に先行して得られた. RPLND前に化学療法が行なわれた Stage IIBの3例ではすべて再発はみられていない. 外来でのACT-D維持療法の副作用は, 臨床上特に問題となるものはなかつた. これらの成績に基き, NSGTと Seminoma 別に血清マーカーを指標とした Stage I およびIIの睾丸腫瘍に対する治療体系を考案した.

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