1984 年 75 巻 12 号 p. 1857-1865
臓器移植臨床において, 現在注目されている cyclosporin Aの免疫抑制作用に関して基礎的検討を行った.
各種マイトーゲン刺激, 1次, 2次MLCによるリンパ球幼若化反応を, cyclosporin Aは濃度依存性に抑制した. また, CMLも抑制され, cyclosporin A存在下のMLCで, 免疫抑制細胞の存在が示唆された.
ラットによる抗体産生実験で, T細胞依存性の抗体産生は著明に抑制され, 再免疫後も抗体産生は同様に抑制されたことから, cydosporin Aの抗原刺激初期での重要性あるいは何らかの免疫抑制機構の存在が示唆された.
免疫抑制性T細胞の1つのサブセットと考えられれている自己赤血球とのロゼット形成細胞は, MLCを行うと cyclosporin A存在の有無にかかわらず増加し, cyblosporin Aはこの抑制性T細胞の増加を抑制しないものと考えられた.
さらに, cyclosporin A存在下のMLCで, マクロファージ様細胞が増加し, これがMLCを抑制したことは, サプレッサー・マクロファージの概念を考えると, cyclosporin Aの免疫抑制作用機序の1つとして, 興味ある結果と思われる.