1984 年 75 巻 12 号 p. 1866-1873
強力な免疫抑制作用により, 腎移植成績の向上をもたらした cyclosporin Aの作用形式を, ヒト末梢血リンパ球を用いて in vitro で検討した.
MLCへの cyclosporin Aの経日的添加除去実験およびCMLによる検討で, 抗原刺激初期における cyclosporin Aの作用が重要であることを示す結果を得た. さらに, 一たん細胞障害性T細胞が誘導された後では, cyclosporin Aの有効な作用を期待できないものと考えられた.
MLC上清中のIL 2活性は, cyclosporin A添加により低下した. また, cyclosporin A存在下MLCへのIL 2添加実験ならびに cyclosporin A前処理後のIL 2刺激実験で, リンパ球のIL 2に対する反応性は低下するものと考えられた. 以上より, cyclosporin Aは, リンパ球のIL 2産生抑制およびIL 2反応性抑制により, 細胞障害性T細胞の増殖を抑制し, 免疫抑制作用を示すものと考えられた.
今回の成績から, cyclosporin Aの臨床使用に際して, 腎移植手術時または術後早期に有効血中濃度に達していることが必要と考えられた. さらに, cyclosporin Aは, 細胞障害性T細胞が一たん増殖を開始すると, これを抑制できないため, azathioprine から cyclosporin Aへの免疫抑制剤の変更は, 十分な免疫抑制作用を期待できない可能性があると考えられた.