日本泌尿器科學會雑誌
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Ureteral Crossover method: 第1報
新しい膀胱尿管逆流防止術の実験的研究
小谷 俊一
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1984 年 75 巻 7 号 p. 1043-1052

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抄録

新しい膀胱尿管逆流防止術-ureteral crossover法-を考案し, 雌雑種成犬13頭を用い, 本術式の安全性と有効性について検討した. 術式は, 両側の粘膜下トンネルを対側尿管口の頭側外側に向かって作り, 2本の尿管を膀胱後三角部で交叉させるものである. 術前, 術後(3ヵ月と6ヵ月)の時点で, 膀胱造影, 排泄性尿路造影, 血液生化学検査を施行し, その推移を検討した. さらに術後6ヵ月目に10頭の粘膜下尿管長を測定, 11頭を屠殺し, 排尿筋と尿管交叉部の病理学的検索を施行した.
(1) 術後6ヵ月目で, 排泄性尿路造影上, 上部尿路が正常に保たれたのは26腎尿管の内19腎尿管 (73%) であった. 残る4腎は無機能腎となり, 3腎尿管は拡張所見を示した. 術後に膀胱尿管逆流の発生を1尿管にのみ認めた.
(2) 手術成功犬9頭の血液尿素窒素, クレアチニン, Na, K, Clの各値は術後いづれも正常範囲内にとどまった.
(3) 手術成功犬ではコントロール犬に比し, 粘膜下尿管長は有意に延長した.
(4)上部尿路が正常に保たれた実験犬の尿管交叉部の病理組織像は, 粘膜側尿管, 漿膜側尿管共に正常構造を有し, 尿管交叉による悪影響は認められなかった. 上部尿管の荒廃した犬では尿管膀胱移行部に狭窄が認められ, 一部では粘膜下尿管が消失しており, これらの原因は病理解剖の結果から, 尿管剥離に際して尿管壁栄養血管を損傷したこと, 及び排尿筋裂孔部の縫合過剰によるものと推測された.
(5) 以上より本術式は, 一部におそらく手技上の問題で上部尿路の荒廃をきたすことがあるが, この問題を解決すれば臨床に応用できる可能性がある.

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