日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
誘発筋電図法による球海綿体反射測定の臨床的意義と問題点について
安藤 正夫武田 裕寿水尾 敏之安島 純一牛山 武久平賀 聖悟
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 76 巻 4 号 p. 528-539

詳細
抄録

神経学的に正常な男子30例と, 脊髄損傷, 脊髄圧迫疾患, 脳血管障害, Parkinson 病, 糖尿病など種々の神経疾患を有する170例, 合計200例の男子症例について, 誘発筋電図法による球海綿体反射 (以下誘発BCRと略) を検討した. 方法は, 陰茎部を矩形波にて電気刺激し肛門括約筋誘発電位を表面電極にて導出. 50~150回の誘発電位を加算平均して潜時を測定した. 同時に, 尿流測定, 膀胱内圧測定, 尿道内圧測定などの urodynamic 検査も行い, 次のような結果が得られた.
1) 対照群の誘発BCRは全例陽性で, 潜時は27~42msec (32.2±4.0msec: mean±S. D.).
2) 頚損群では全例誘発BCR陽性で潜時も正常であったが, 下部胸髄, 腰・仙髄損傷群では, 34例中9例 (26%) は誘発 BCR 陰性で, 2例 (6%) で潜時が延長していた.
3) 脊髄群で誘発 BCR 陰性例は全例膀胱内圧曲線上無反射型を示し, 最高尿道内圧が誘発BCR陽性例と比較し有意に低値を示した.
4) 脊髄圧迫疾患群91例中, 3例 (3%) に誘発BCRの潜時延長を認めた.
5) 脳疾患群の誘発BCRは全例陽性で潜時も正常であった. その他の群では直腸腫瘍術後再発の1例で著明な潜時延長を認めた.
今回の成績から, 誘発BCRには種々の問題点は残されているが, 仙髄反射弓に関する客観的検査法として有用であり, urodynamic 検査法の有力な補助的診断手段の1つになり得ると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top