日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
水腎症に関する実験的研究
水腎尿中成分と水腎の機能回復について
斎藤 雅昭
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1985 年 76 巻 4 号 p. 575-587

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抄録

臨床上, 閉塞性腎障害である水腎症に対して, 保存的に治療すべきか腎摘をすべきか苦慮することが多い. これは水腎の機能回復を予知できないためである. そこで著者は水腎の機能回復に必要な条件を明らかにするため以下の実験を行った.
実験方法: 雑種雌犬50頭を用いて一側尿管を完全結紮して水腎症を作製し, 閉塞朔間に伴う水腎の尿中成分及び腎機能の各種パラメーターの推移を観察した. また閉塞を解除した後, 対側尿管を結紮し, 閉塞何週までの腎が単腎で生命維持可能なレベルまで機能が回復するかを観察した. そして水腎の機能回復に必要な条件を検討した.
結果: (1)脱水時UUN, Cr, Kは閉塞期間とともに低下した. また分腎尿量比, 自由水クリアランス, 浸透圧クリアランスも閉塞期間とともに低下した.
(2) 閉塞解除時の尿中成分及び腎機能の各種パラメーターの数値を, 機能回復群と非回復群の2群に分け有意差を検討した. 脱水時の水腎尿浸透圧, K濃度及び利尿時の自由水クリアランス, 分腎尿量比に有意差 (p<0.01) を認めた. それぞれ320mOsm/l, 16mEq/l, 0.07ml/分, 0.2以上を示した水腎は単腎で生命維持可能なレベルにまで機能回復すると考えられる.
(3)単腎で生命維持可能なレベルにまで機能が回復するのは閉塞5週の水腎までであった.
(4)NAG活性は水腎では正常腎より高値を示したが, 回復能を示すパラメーターとはなり得なかった.

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