日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
尿失禁に対する神経ブロック療法の経験
窪田 理裕小柳 知彦高松 恒夫
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1985 年 76 巻 6 号 p. 865-874

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抄録

主に膀胱機能異常による難治性尿失禁患者15名に対し各種神経ブロック療法 (クモ膜下腔ブロック, 仙骨硬膜外ブロック, 両側S3神経根ブロック) を試みた。臨床的には, 15例中14例で失禁は完全に消失したが, クモ膜下腔ブロックを行ったうちの1例で, 軽度の腹圧性尿失禁を生じた。下部尿路機能検査ではブロック後, 膀胱容量は, クモ膜下腔ブロックにて平均200%, 仙骨硬膜外ブロックにて平均127%, S3神経根ブロックにて平均91%増大していた. 膀胱コンプライアンスも, ブロック前後で評価し得た14例中10例で増大し, 無抑制収縮も, ブロック前11例に認め10例で著明抑制又は完全消失していた. 尿道内圧検査及び, 外尿道括約筋筋電図検査では, クモ膜下腔ブロック例に極度低下又は, silentと成るものが散見されたが, それ以外のものは, ほとんど変化がないか, 軽度低下の所見を得た。神経ブロック療法は, 侵襲も少く, 手技的にも容易で尿失禁の治療法として今後ますます普及すべきものと印象を得た。

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