日本泌尿器科學會雑誌
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出生前超音波検査により発見される尿路奇形に対する治療方針
島田 憲次田口 恵造細川 尚三荻野 敏弘有馬 正明森 義則生駒 文彦
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1285-1293

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抄録

最近の産科領域における超音波診断の進歩に伴い, 出生前に発見される先天異常の報告が増加している. われわれは最近, 予宮内で発見された尿路異常を4例経験したので報告する.
症例1. 妊娠35週の超音波検査で腹腔内に多数の嚢胞状拡張が描出された. 出生後の精査の結果, 右異所性尿管瘤とそれによる右高度拡張尿管と判明し, 経尿道的瘤切開術を加えた. 症例2. 妊娠37週のとき両側の腎盂拡張が見出された. 出生後の諸検査の結果, 右巨大尿管および左腎盂尿管移行部狭窄と判明し, 右尿管尿管吻合術が施行された. 症例3. 妊娠35週のとき左腎盂の拡張が見出された. 症例4. 妊娠39週のとき左腎盂拡張が発見された. 症例3, 4はともに出生後の尿路精査で腎盂の拡張が中等度の腎盂尿管移行部狭窄であり, 腎盂の拡張が胎生期よりも出生後に軽減していたため, 経過観察中である.
一般に, 出生前に尿路異常が発見された時には, 超音波診断の信頼性, 肺の成熟度や患腎機能の推定, 羊水量の変化などを考慮のうえ, 治療方針が決定される. 今後, 本邦においても出生前に発見される尿路異常が増加し, これに対する小児泌尿器科医の積極的な外科的処置が行われる様になると思われる. 子宮内胎児治療や出生後の早期治療などの治療の是非に関して, 早急に識者間のコンセンサスを必要とする時期であると考える.

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