日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
尿路手術における組織接着剤の応用
第1報 イヌ腎切開術
近藤 猪一郎藤井 浩中野 勝飯田 萬一工藤 治林 昌亮
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1303-1308

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抄録

尿路系手術においては, 縫合糸はできるだけ少ない方が望ましい. そのためには組織接着剤が有用である.
我々は, 体重11~14kgの雄性ビーグル犬の腎切開術に, 新らしく開発された組織接着剤 (フィブリノーゲン, トロンビン, 血液凝固因子XIII, アプロチニンおよび塩化カルシウムよりなる) の応用を試み, それと従来行なわれている二層縫合群との比較検討を行なった. 両群とも, 右腎を摘出, 左腎に手術を行なった. 術前・術後に, 尿検査, 血漿尿素窒素, クレアチニン, PSP血中消失速度を測定し, また, 術後4週目に腎を摘出し, 病理組織学的検索を行なった. 結果は, 次のごとくである. 1) 組織接着剤の接着力は強力であった. 2) 腎への侵襲程度は, 二層縫合群に比して軽微であった. 3) 接着剤に対する異物反応は全く認められなかった.
以上の事実より, この組織接着剤は, 今後, 臨床においても積極的に使用されるべきすぐれた薬剤と考える.

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