日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
膀胱腫瘍の統計学的研究
臨床的・病理学的因子と予後との関係
高士 宗久村瀬 達良三宅 弘治三矢 英輔
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1323-1335

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抄録

1973年1月から1982年12月までの10年間に名古屋大学医学部附属病院泌尿器科において, 入院治療を施した膀胱の原発性上皮性腫瘍のうち初回治療を行なった228例を対象として, その予後について検討した.
全症例の5年実測生存率および相対生存率はそれぞれ63.7%, 73.3%であった. 手術法別の5年相対生存率は, TUC122.6%, TUR98.0%, 膀胱切開による腫瘍切除術91.5%, 膀胱部分切除術46.9%, 膀胱全摘術43.8%であった. また, 以下の臨床的および病理学的諸因子に注目し, 各因子と生存率との関係を検討した. 女子の生存率は男子に比して有意に低値を示し, 年齢別では70歳以上の群の生存率はそれ以下の群に比して低かった. 膀胱刺激症状を有する群の生存率はこれを有しない群に比して有意に低値を示した. 腫瘍発生部位別では尿管口近傍領域の生存率はその他の部位に比して高値を示した. 腫瘍の大きさでは3cmをこえるものの生存率はそれ以下のものに比して有意に低かった. 腫瘍の肉眼的形態別では乳頭状有茎性, 乳頭状広基性, 非乳頭状広基性の順に生存率は低値を示した. 組織学的深達度別の5年相対生存率は, pTa: 94.6%, pT1: 83.5%, pT2: 56.9%, pT3a: 34.7%, pT3b: 30.3%, pT4: 8.8%であった. 移行上皮癌の異型度別の5年相対生存率は grade 1: 102.2%, grade 2: 89.2%, grade 3: 48.7%であり, 移行上皮癌以外の組織型では52.1%であった. また, 組織学的発育様式別の5年相対生存率は乳頭状非浸潤型: 98.3%, 乳頭状浸潤型: 72.5%, 非乳頭状浸潤型: 40.4%であった. 一方, 腫瘍の数, 初発症状発現から受診までの期間については, それぞれ生存率との間に特定の関係はみられなかった.
以上より, 性, 年齢, 膀胱刺激症状の有無, 腫瘍の発生部位, 大きさ, 肉眼的形態, 組織型, 異型度, 深達度, 組織学的発育様式が膀胱癌患者の予後に影響を及ぼす重要な因子であることが示唆された.

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