日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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経皮的超音波腎砕石術に使用する灌流液の血清電解質・浸透圧に及ぼす影響
馬場 志郎丸茂 健長谷川 親太郎田野口 仁塚本 拓司大橋 正和中島 洋介中村 薫中薗 昌明出口 修宏村井 勝実川 正道田崎 寛
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1336-1340

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抄録

経皮的超音波腎砕石術に使用する灌流液と灌流条件の血清浸透圧, 電解質, Htに及ぼす影響を検討する目的で10症例の腎結石患者で手術前後の測定値を検討した. 灌流液はD-マニトール・ソルビトール混合液かもしくは3%D-ソルビトール液を用い, 100cmH2O圧下で低圧持続吸引灌流を行った. この時の腎盂内圧は40~60cmH2Oに相当した. 術後血清ナトリウム値はやや減少するも有意差はなく, Ht値は術前に比較し有意に減少した (p<0.05).
手術前後の血清浸透圧実測値には著明な変動はなかった. 術後の浸透圧理論値を血糖値, Na, BUN濃度より計算し, 術後の浸透圧実測値との差 (osmolarity gap) を灌流液体内吸収の指標とした. その平均値は10.4±7.4mOsm/L (mean±S.D.) であり, 術中に300~800mlの灌流液が腎盂より吸収されるものと推定された. 術後の臨床症状から disequilibration syndrome をきたした症例はなかった. 以上の事実から本法に使用する灌流液は末梢循環血液中に吸収されるものの, 腎盂内圧を60cmH2O以下に保持すればその吸収量は少いことが判明した.

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