日本泌尿器科學會雑誌
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腎癌に対する腎動脈塞栓術が血液像, 血液生化学に及ぼす影響
奴田原 紀久雄東原 英二河辺 香月新島 端夫武井 孝多胡 紀一郎上野 精八代 直文
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1386-1392

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抄録

腎癌に対して腎動脈塞栓術を施行すると, 一過性の腎機能障害を生ずることがあることを経験した. そこで腎動脈塞栓術施行症例の血液像, 血液生化学像の変化を, 腎動脈塞栓術を行なわない腎摘症例と比較検討した. 結果は腎動脈塞栓術では, 白血球数増加, 血中尿素窒素, 血清クレアチニン, 血清GOT, 血清GPT, 血清LDHの上昇の程度が, 腎摘のみの症例より有意に高かった. 血中尿素窒素, 血清クレアチニン上昇でみられた腎機能悪化の原因は, 造影剤の腎毒性が関与していると考えられた. 白血球数増加は腎動脈塞栓術により広範な組織壊死がおこったことによるものと考えられた. GOT, GPT, LDHの腎動脈塞栓術における上昇は, 腎内酵素の逸脱によると考えられた. 塞栓後の腎機能を保存するためには, 術中術後の十分な補液と造影剤使用量を少なくすることが必要と考えられた.

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