日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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睾丸に発生した adenomatoid tumor の1例
丸茂 健実川 正道田崎 寛細田 泰弘
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1985 年 76 巻 9 号 p. 1425-1427

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抄録

症例は30歳男, 陰嚢内に触知する無痛性腫瘤を主訴として受診. 血清腫瘍マーカー (HCG, HCG-β, AFP) の値は正常範囲内であったが悪性腫瘍を否定できないため手術を施行した. 腫瘤は右睾丸下極付近, 白膜内にあり, その硬さから瘢痕組織などの良性病変を考慮して睾丸の血流を一時的に遮断の後, 腫瘤を摘出, 迅速標本にて adenomatoid tumor が示唆されたため睾丸の血流を再開して手術を終了した. 摘出標本は直径7mm, 球形, 白色で硬く, 割面は均一, 白色であった. 病理組織学的には間質線維性結合組織の中に扁平, 立方状ないし円柱状細胞からなる腺腔ないし管腔を認め, これらの細胞にしぼしば存在した空胞はPAS染色陰性であった. 睾丸の adenomatoid tumor は極めて稀であるが, 注意深い触診, 睾丸腫瘍のマーカーの検索, 超音波断層検査が不必要な除睾術を避けるための有用な手段になるとおもわれる.

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