日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
膀胱原発性の腸管型腺癌 (paneth cell を含む) の1例
川添 和久滝本 至得布施 卓郎小林 正喜蜂矢 隆彦三杉 和章
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 77 巻 5 号 p. 822-826

詳細
抄録
膀胱原発の腸管型腺癌 (Paneth cell を含む) の1例を報告する.
症例は40歳の男性で, 無症候性肉眼的血尿を主訴として来院. 膀胱鏡検査にて膀胱頂部付近に一部潰瘍を伴った拇指頭大の広基性腫瘍を認めた. 生検診断は粘液産生腺癌であった. 胸部X-P, 消化管造影で異常はみられず, 尿膜管癌を疑い広範な膀胱部分切除術を施行した. 組織学的には腫瘍は粘膜下までにとどまっており, pT1bであった. PAS染色で粘液産生がみられ腸管に類似していた. HE染色で少数であるが赤い顆粒を持った Paneth cell が認められ, 好銀染色では黒く染色された好銀顆粒を持った細胞がみられた. muramidase 抗体による免疫組織化学的染色では褐色に染った顆粒を認めた. 以上の所見により Paneth cell を含んだ膀胱の腸管型腺癌と診断した. Paneth cell の多くは小腸の Lieberkühn 腺の陰窩底部にみられるが, 機能や生理的意義に関しては未だ明確ではない.
膀胱原発の腺癌で Paneth cell を見い出した腸管型腺癌は1981年 Pallesen が報告しているものが第1例目であり, 本例は第2例目と思われる.
著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top