日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
膀胱癌と胃平滑筋肉腫の同時性重複悪性腫瘍の1例
尿路性器腫瘍を含む上皮性および非上皮性重複悪性腫瘍の本邦報告例の検討
柳沢 良三森 隆吉井 満寛東海 林文夫横山 正夫鶴丸 昌彦秋山 洋原 満
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1986 年 77 巻 5 号 p. 827-833

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抄録
膀胱癌と胃平滑筋肉腫の同時性重複悪性腫瘍の1例を報告した. 症例は73歳男子で, 1983年8月24日, 肉眼的血尿を主訴に来院した。膀胱鏡にて右側壁に有茎性乳頭状腫瘍を認め, 同時に左側腹部の腫瘤を触知した. 膀胱腫瘍に対して経尿道的腫瘍切除術を行なった. 病理診断は移行上皮癌 grade 3, stage pTa であった. 腹部腫瘤は胃透視, 注腸造影, 胃内視鏡, 腹部CTスキャンにて胃粘膜下腫瘍と診断され, 消化器外科転科後, 胃亜全摘, 横行結腸合併切除およびリンパ節郭清術を施行した. 病理診断は胃平滑筋肉腫であった. 術後5ヵ月に両腫瘍の再発を認めた. 膀胱腫瘍に対しては再度経尿道的切除術を施行した. 右肝動脈栓塞術後に開腹したが, 胃平滑筋肉腫の肝転移巣は切除不能であった. 患者は1984年7月23日癌死した. 本邦文献上, 一方に非上皮性悪性腫瘍を含む尿路性器重複悪性腫瘍46例を集計した. 男女比は3:1と男に多く, 同時発生は32例中22例 (69%) と高率で, 異時性は10例 (31%) であった. 46例中, 尿路性器癌と他臓器非上皮性悪性腫瘍の組み合わせ40例について検討した. 尿路性器癌は膀胱 (23例) が, 他臓器非上皮性悪性腫瘍は肉腫 (20例) が最も多かった. 肉腫は悪性リンパ腫の7例と横紋筋肉腫の5例が多く, 平滑筋肉腫は2例のみであった. 膀胱癌と胃平滑筋肉腫の組み合わせはなかった.
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