抄録
膀胱癌と胃平滑筋肉腫の同時性重複悪性腫瘍の1例を報告した. 症例は73歳男子で, 1983年8月24日, 肉眼的血尿を主訴に来院した。膀胱鏡にて右側壁に有茎性乳頭状腫瘍を認め, 同時に左側腹部の腫瘤を触知した. 膀胱腫瘍に対して経尿道的腫瘍切除術を行なった. 病理診断は移行上皮癌 grade 3, stage pTa であった. 腹部腫瘤は胃透視, 注腸造影, 胃内視鏡, 腹部CTスキャンにて胃粘膜下腫瘍と診断され, 消化器外科転科後, 胃亜全摘, 横行結腸合併切除およびリンパ節郭清術を施行した. 病理診断は胃平滑筋肉腫であった. 術後5ヵ月に両腫瘍の再発を認めた. 膀胱腫瘍に対しては再度経尿道的切除術を施行した. 右肝動脈栓塞術後に開腹したが, 胃平滑筋肉腫の肝転移巣は切除不能であった. 患者は1984年7月23日癌死した. 本邦文献上, 一方に非上皮性悪性腫瘍を含む尿路性器重複悪性腫瘍46例を集計した. 男女比は3:1と男に多く, 同時発生は32例中22例 (69%) と高率で, 異時性は10例 (31%) であった. 46例中, 尿路性器癌と他臓器非上皮性悪性腫瘍の組み合わせ40例について検討した. 尿路性器癌は膀胱 (23例) が, 他臓器非上皮性悪性腫瘍は肉腫 (20例) が最も多かった. 肉腫は悪性リンパ腫の7例と横紋筋肉腫の5例が多く, 平滑筋肉腫は2例のみであった. 膀胱癌と胃平滑筋肉腫の組み合わせはなかった.