名古屋市内の一企業の女性社員に尿失禁に関するアンケート用紙を配布し, 回答の得られた968名 (回答率93.3%) を集計した. 対象の年齢は17~69歳で, 10~20代が全体の約7割を占めた.
1) 尿失禁が現在あるものは全体の8.5%, 過去にあったが消失したものは6.7%であった.
2) 尿失禁保有率は年代と共に増加し, 40代をピークとしてその後やや低下した (10代1.5%, 20代4.1%, 30代17.7%, 40代23.9%, 50代21.8%, 60代20.0%).
3) 出産回数が多い程, 尿失禁保有率は高かった (0回4.3%, 1回15.2%, 2回24.0%, 3回以上34.3%).
4) 未産婦の尿失禁保有率は, 年代と共に上昇した.
5) 尿失禁の現在ある群の平均体重は, 尿失禁の経験のない群より, 30代・50代・60代では統計的に有意に重かった.
6) 尿失禁の誘因はくしゃみ, 咳, 急がないと間にあわない, なわとび, 笑う, 精神的緊張, 走る, 重い物を持つの順に多かった.
7) 尿失禁の程度は, 気にならない73%, 濡れると気になって下着を替える22%, 時々生理用ナプキンを使う4%であった.
8) 尿失禁を主訴として医療機関を受診したことのあるものはなかった.
本邦の健常女性において, 未治療の腹圧性尿失禁が多数存在すると推測された. 腹圧性尿失禁の啓蒙に取り組むことが今後の課題になると思われる.