日本泌尿器科學會雑誌
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前立腺癌の治療成績
ホルモン療法を中心として
福谷 恵子三方 律治武内 巧河邊 香月横山 正夫
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1987 年 78 巻 10 号 p. 1821-1826

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抄録

東京大学医学部付属病院分院泌尿器科において1963年より1985年までの23年間に治療した前立腺癌105例の成績を報告した. 初診時の stage はA23例 (A1 10, A2 13), B1例, C33例, D48例であり, Bは1例のみなのでCに含めて取り扱った. 初期治療としてCは全例, Dでは2例を除いて全例に去勢術と diethystilbestrol diphosphate を主としたエストロゲン剤投与によるホルモン療法を施行した. Aの16例 (A1: 9, A2: 7) には治療を行わず, 7例(A1: 1, A2: 6) にはホルモン療法を行った. 5年実測生存率はstage A 68% (A1 89%, A2 54%), stage C 69%, stage D36%で, A1とA2, AとD, CとDとの間に有意差を認めた. Grade 別5年生存率は, G1 56%, G2 64%, G3 44%で, いずれの間にも有意差が無かった. 死亡者69名中, 死因が前立腺癌による癌死と考えられる者の割合は stage A2/14で2名はいずれもA2であり, C6/18, D19/37, 全体で27名 (39%) であった. また心血管病死は全体で7例 (10%), 脳血管病死も7例 (10%) であった. 21例 (stage A 21, C5, D15) にホルモン低抗性再燃をみ, 12例に対し放射線およびCDDPを主とした化学療法を行ったが, 9例が再発後2年以内に死亡した. 前立腺癌に対するホルモン療法の成績は良好で, 心血管障害死は全国の同年齢男子死亡者の統計に比較し少なかった. しかし再燃癌の予後は集学的治療を行ってもなお不良であった.

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