日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
Stage D前立腺癌患者における末梢血リンパ球サブポピュレーションの検討
森田 辰男大場 修司徳江 章彦米瀬 泰行
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 78 巻 12 号 p. 2060-2064

詳細
抄録

Stage D前立腺癌患者38例および健康成人20例において, 末梢血リンパ球サブポピュレーションの解析を行った. 使用したモノクローナル抗体は, OKT3, OKT4, OKT8, OKM1, OKIal, Leu7, Leu11aの7種であり, フローサイトメトリーにより陽性率を求めた. 未治療 stage D前立腺癌患者群では, 対照群に比し, OKT3陽性細胞およびOKT4陽性細胞の割合の減少, OKT4/OKT8比の低下, OKT8陽性細胞および Leu7 陽性細胞の割合の増加が有意に認められた. また, 去勢術を11例に, Estramustine phosphate (560mg/日) 投与を8例に施行し, 治療前および治療後3~4週目に末梢血リンパ球サブポピュレーションの解析を行ったところ, 全例において, 血中PAP値の有意な低下がみられたにもかかわらず, 何れのリンパ球サブポピュレーションにも有意な変化は認められなかった.
以上より, stage D前立腺癌患者では, 末梢血リンパ球サブポピュレーションに量的異常がみられ, とくに, OKT4/OKT8比の著明な低下がみられたことは, 前立腺癌患者が免疫抑制状態にあることを示唆していると考えられた. また, ホルモン療法施行後も, 末梢血リンパ球サブポピュレーションに著明な改善がみられなかったことから, 前立腺癌患者における末梢血リンパ球サブポピュレーションの解析は, 病勢のパラメーターとして臨床的有用性に欠けるものと思われた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top