日本泌尿器科學會雑誌
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虚血性腎障害に関する実験的研究
腎動脈閉塞による偏側性虚血性腎障害の長期的観察と各種薬剤の虚血解除後投与の有効性に関する検討
辻 祐治
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1987 年 78 巻 2 号 p. 281-291

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抄録

予期せぬ腎虚血に対する有効な対応策を追及する目的で, 偏側性虚血性腎障害の長期的観察を行い, さらに各種薬剤の虚血解除後投与の有効性について比較検討を加えた. (1) 犬分腎尿採取モデル9頭の偏側腎動静脈を90分間完全閉塞し虚血性腎障害とし, 虚血腎および健常対側腎それぞれについて各種クリアランス法による腎機能を7週間にわたり観察した. その結果, イヌリンクリアランス (Cin) およびパラアミノ馬尿酸クリアランス (CPAH) は3週目まで, クリアチニンクリアランス (Ccr) は5週目まで虚血前ならびに健常対側腎と比較して有意に低下していたが, 7週目までには有意差を認めなくなるまでに回復した. このことからこの実験モデルの腎障害は可逆性であり, かつその虚血解除後早期におけるこれらクリアランス値の比較は各種薬剤の腎機能保護効果の検討に適当と判断された. (2) 次にこの実験モデル20頭を4群に分け, 対照としてなにも投与しなかった群と虚血解除直後に1回だけ経静脈的に mannitol, methylprednisolone, ATP-MgCl2を投与した群とし, 虚血解除後1週間の虚血腎腎機能の推移を比較した. その結果, methylprednisolone 投与群, ATP-MgCl2投与群の Cin, Ccr, CPAH については未治療群と同様な経過をとるのに対して, mannitol 投与群は有意に良好な回復を示したことから, mannitol の虚血解除後投与は予期せぬ腎虚血に対する有効な対応策と判断された.

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