日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
78 巻, 2 号
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  • 片岡 喜代徳
    1987 年 78 巻 2 号 p. 203-217
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    coulter counter ZBI に coulter channelyzer, microcomputer を併用し, 尿中のCaOx結晶量を容易にかつ短時間のうちに測定することが可能な装置を開発した. この装置を使って結石患者と健常人の尿中CaOx結晶量をCa, Ox, 蛋白質を負荷した条件下で測定し, 両者の結晶形成やその結晶量を比較することにより, CaOx結晶形成の機構について検討した. CaOx結晶尿の出現頻度や結晶量は殆どの条件下で結石患者の方が多かった. 結晶の出現に最も影響を及ぼしたのはOxの負荷で, Caや蛋白質では影響はなかった. 患者では結晶1個あたりの体積が大きく, このことが患者の結晶量を多くさせている原因と考えられた. 結晶関連物質から結晶形成をみると, 両者ともOx濃度に強く依存していた. Ca濃度については, 健常人ではまったく依存していなかったが, 結石患者においては軽度依存していた. 結石患者の尿は健常人の尿に比べCaOx結晶が形成されやすい状態にあり, 結晶形成阻止物質とされるクエン酸やMgが患者の尿では低いことがその原因の一つと考えられた. 結晶の体積とCa濃度, Ox濃度の関係をみると健常人, 結石患者ともに結晶量はOx濃度に相関していた. 結石患者ではCa濃度にも相関して, 結晶量が増加した. Ca濃度, Ox濃度がほぼ同じ領域で両者の結晶量を比べると, 結石患者は健常人に比べCaOx結晶が約2倍形成されていた.
  • 山本 忠男
    1987 年 78 巻 2 号 p. 218-226
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト前立腺には多量の酸性フォスファターゼ (以下 ACPase) が存在していることは広く知られている. しかし, ヒト前立腺腺上皮細胞における電顕的局在を明らかにした報告は少ない. ヒト前立腺における ACPase の局在を Gomori 法を用いて電顕的に観察した. ACPase 活性は細胞底部および核上野におけるライソゾームに認めるとともに, 核周囲に存在するゴルジ装置にも認めた. さらに特徴的なことは, ACPase の局在が多胞体にも認められたことである. 電顕的および組織化学的研究により, 細胞頂部の細胞膜よりメロクリン分泌により, これらの小器官が分泌されることが認められた. すなわち, 今回の電顕組織細胞化学的研究により前立腺腺上皮細胞の ACPase には, ライソゾーム性の自家消化にあずかるものと, 分泌性のものの2種類の ACPase が存在することが観察された.
  • 第2報: Flow cytometric DNA analysis による膀胱腫瘍の予後と腔内再発の解析
    吉川 和行, 栃木 達夫, 星 宣次, 折笠 精一, 今井 克忠
    1987 年 78 巻 2 号 p. 227-231
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    94名の100膀胱癌 (移行上皮癌) について flow cytometric (FCM) DNA analysis を行った. ploidy の判別にはDNA index (DI)“腫瘍細胞のG1期の peak channel number/diploid standard のG1期の peak channel number”を用い, 2つ以上のDNA aneuploidy を示す clonal heterogeneity についても検討した. これら94名の患者に3カ月から5年間 (平均23.3±16.0月) の follow-up を行い, ploidy と患者の予後, 腔内再発につき検討した.
    1) 観察期間中の死亡例は17名, うち膀胱癌による癌死例は8名, 他因死例は9名であった. 又, 進行末期癌の状態で担癌生存例は5名であり, 残る72名は tumor free で生存中であった. FCM DNA analysis では diploid が24例, DNA aneuploidy は76例であった. clonal heterogeneity 例は13例に認めた. 癌死例及び進行末期癌の予後不良例は総てDNA aneuploidy を示した. 又, clonal heterogeneity を示した症例の予後不良率は38.5%と他の clonal heterogeneity を示していないDNA aneuploidy のそれ (13.1%) より高かった (p<0.05). 以上よりFCM DNA analysis は膀胱癌の予後評価に有用であると思われた.
    2) FCM DNA analysis が表在性膀胱癌の術後腔内再発の予測に有用か否かをみるために, 31例の初発例につき検討したが, grade, ploidy による再発の有無の差は認めなかった.
    3) FCM DNA analysis は膀胱癌の悪性度評価に有用であり, その迅速性とも相まって特にT1, T2腫瘍のより適切な治療計画をたてるための術前検査として活用すべきと考えられた.
  • 福士 泰夫, 折笠 精一, 神奈木 玲児, 箱守 仙一郎
    1987 年 78 巻 2 号 p. 232-237
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    SSEA-1 (Lex) 抗原群に対して我々の確立したモノクローナル抗体 (以下M-Ab) を用い, 泌尿器系悪性疾患患者血清中におけるこれら抗原群のレベルを測定した. 健常者110例での値より Mean+2SD を算出し, その値以下を正常値とした. その結果, Lexでは, 悪性及び良性疾患共に陽性例は殆んどみられなかったが, Sialosyl Lexの測定では, 腎細胞癌33.3%, 前立腺癌30%, 膀胱癌18.1%, 睾丸, 陰茎腫瘍0%の陽性率であった. 本抗原の測定は, 健常者0.9%, 泌尿器系良性疾患3.0%と偽陽性率が非常に低く, 腎癌あるいは前立腺癌の如き腺癌のよい血清中癌マーカーとなることが予想された.
  • 金子 裕憲
    1987 年 78 巻 2 号 p. 238-248
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中分離 Enterococcus faecalis (以下 E. faecalis) の病原性について臨床的・基礎的検討を行った. 東京大学医学部附属病院泌尿器科における1980年7月より1984年6月までの尿路由来 E. faecalis の分離頻度の年次推移は8.5%, 9.8%, 15.2%, 15.4%と1982年後半から増加傾向がみられ, 対象となった271例中242例 (89.3%) は複雑性尿路感染症例であった. 本菌の薬剤感受性は penicillin G (以下PCG) と ampicillin (以下ABPC) が良好であった. 臨床的に本菌が起炎菌と思われる有症状例は10例 (3.7%) にすぎず, 重篤な症状を呈したものは認められなかった. ラットを用いた上行性感染実験では E. faecalis 接種後3日から7日目では20腎中5腎に腎盂腎炎が発症したが, 炎症は腎盂にとどまり, 14日後には腎内生菌数も減少して自然治癒する傾向にあった. しかし, cyclophosphamide (以下CPA) の前処置により全身的免疫能の低下したラットでは発症頻度の増加ならびに感染の重症化がみられた. Proteus miranilis (以下 P. mirabilis) と本菌の複数菌感染実験では24腎中19腎 (79.2%) に腎盂腎炎が発症し, 両菌とも腎内に多数存在していた. P. mirabilis を目的とした latamoxef (以下LMOX) による治療実験では, P. mirabilis 単独感染時の腎盂腎炎の発症頻度は無治療群の83.3%から治療群では29.2%へ有意に減少していた (p<0.01). しかし, 複数菌感染時には治療群でも70.8%に腎盂腎炎が認められ, 無治療群との間に有意差がなく, 治療効果の低下が認められた.
  • 榊原 尚行, 坂下 茂夫, 小柳 知彦
    1987 年 78 巻 2 号 p. 249-252
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常精巣組織6例と精上皮腫組織11例のLDH活性値およびLDHアイソザイム分布を測定した. 精上皮腫組織のLDH活性値は3,778.4±3,674.7W.U./mg. protein (mean±S. D., n=11) で正常精巣組織のLDH活性値, 787.2±502.4W.U./mg. protein (mean±S. D., n=6) に比して有意に高値であった (p<.05). 正常精巣組織にはLDH1~LDH5までの5つのアイソザイムとLDHXがみとめられたが, 精上皮腫組織ではLDH1~LDH5までの5のアイソザイムのみでLDHXはみられなかった. 精上皮腫組織では正常精巣組織に比してLDH1とLDH2の2つのアイソザイムが上昇していた. LDHXは精巣に第1次精母細胞が出現する時期よりみられることより, 精上皮腫は第1次精母細胞より未分化な精細胞が癌化したものと考えられた.
  • 橋本 博, 山内 薫, 徳中 荘平, 八竹 直, 大塚 晃, 南 茂正, 石田 初一, 宮本 力
    1987 年 78 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の血清学的診断における前立腺特異抗原 (PA) の臨床的意義を検討する目的で, 未治療前立腺癌13例, 治療中の前立腺癌75例を含む計229例の男性患者の血清PA値を radioimmunoassay (RIA) により測定した. その正常上限値を, 前立腺疾患及び悪性疾患の否定された23例の平均値+2S.D.より, 3.7ng/mlと設定したところ, 未治療前立腺癌の全例がこれを越えたが, 前立腺肥大症でも40.9%がそれを越えたため, 前立腺肥大症88例の平均値+2S.D.である20.4ng/mlまでを前立腺肥大症域, それ以上を前立腺癌域 (PA陽性) とした.
    以上の値を設定して検討したところ, 未治療前立腺癌におけるPA陽性率は92.3%, 病期Aの2例はい. ずれも陽性, また前立腺癌以外でのPAの偽陽性率は4.3%と良好な成績であつた. 同時にRIA法で測定した前立腺酸性フォスファターゼ (PAP) に比し, 特異性についは大差なかつたが, 感度の点でPAの方が明らかに優れていた. ただし, PAの測定のみを行なえば良いと言う訳ではなく, PA, PAPの両者を組み合わせることにより, 多様性の強い前立腺癌をより広くとらえることに臨床的な意義があると思われた.
  • 硬膜外導出法に関する基礎的検討
    山口 脩, 深谷 保男, 白岩 康夫, 石崎 恵二, 丸山 俊章
    1987 年 78 巻 2 号 p. 260-268
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    硬膜外導出法によって, 球海綿体反射によるヒト脊髄誘発電位を検討した. 仙髄以下が保存されている頚胸髄損傷患者10名からは, 導出電極を硬膜外腔で仙髄分節の高さに置くと, 再現性のある分節性脊髄誘発電位を得ることができた. また, これら10名の患者のうち6名に urodynamic study を施行したところ, 6名ともDSDを伴なう detrusor hyperreflexia を示した.
    分節性脊髄誘発電位は特徴的な波形を有し, 最初の陽性波 (P1波), 次の陰性波 (N1波) および最後の陽性波 (P2波) から構成されていた. P1波は末梢潜時9.8msec, 持続時間1.20msecを示し, 小さなスパイク状電位であった. N1波は末梢潜時13.4msec, 中枢潜時3.6msec, 持続時間6.1msecを有するシャープな陰性波であった. P2波は末梢潜時25.8msec, 中枢潜時15.8msecで出現する大きな陽性電位で, 持続時間が28.0msecともっとも長く, 緩徐な変動を示した.
    これら成分波の陰茎電気刺激強度に対する反応はおたがいに異なり, P1波は閾値がもっとも低く, 20Vの弱刺激でも容易に記録された. 一方, N1波は刺激強度増加に対しその振幅がほぼ直線的に増大したが, P2波は刺激電圧60V付近から飽和しそれ以上増加しなかった.
    各成分波に関する以上の性質は, 四肢の末梢神経刺激時に得られる脊髄誘発電位の性質と同じであり, この場合に確立されている成分波の起源 (すなわち, P1波が後根に流入する活動電位, N1波が介在ニューロンの興奮, P2波が1次求心性線維の脱分極をそれぞれ反映するという考え方) を, 今回我々が検討した球海綿体反射の脊髄誘発電位にもそのまま適応できるものとおもわれる.
    一方, 仙髄以下に障害のある患者2名はいずれも detrusor arenexia を示したが, このうち仙髄自体が損傷された症例では脊髄誘発電位を記録することができなかった. 残りの1例は直腸癌の術後に発生した末梢神経障害で, 成分波のうちP1波だけが遅れた潜時で記録された.
    以上より, 硬膜外導出法による脊髄誘発電位の記録は, 脊髄からの情報量が多く, 従来と異なった視点から下部尿路機能を検討することが可能となり, 今後, 神経泌尿器科領域で重要な位置を占めるものとおもわれる.
  • Contact-Micro-Cystoscopy の研究 (第2報)
    中尾 昌宏, 小林 徳朗, 前川 幹雄, 中川 修一, 豊田 和明, 温井 雅紀, 高田 仁, 渡辺 泱
    1987 年 78 巻 2 号 p. 269-273
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    生体の膀胱上皮の細胞レベルでの観察が可能な contact-micro-cystoscopy の研究の一環として, Storz 社製 Micro-endoscope 27015Bを用いて生体の膀胱上皮を観察した.
    0.5%クレシールバイオレットアセテート水溶液を作製し, 膀胱内に注入して5分間放置し, 十分に洗浄して観察した. 内視鏡的観察では, 粘膜の色素による染色性や凹凸不整の有無, 細胞核の大小や密集度を検討した.
    正常上皮では, 色素の染色性は軽度で表面は平滑であり, 小型の核が疎に配列していた. 腫瘍性病変では, 色素の染色性は中等度で表面は不規則な凹凸を示し, 大型の核がやや密に配列していた. ただし糜爛は色素に著しく濃染され, 核の配列は非常に疎であった.
    本法によって, 通常の膀胱鏡では認識できない膀胱上皮の腫瘍性病変の発見が可能であると考えられた.
  • 第3報: 内括約筋部尿道における beta receptor の役割について
    香村 衡一, 安田 耕作, 山城 豊, 村山 直人, 和田 隆弘, 島崎 淳, 服部 孝道
    1987 年 78 巻 2 号 p. 274-280
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    第1報で作製, 報告した内括約筋犬, 即ち, 外括約筋部尿道の筋層を切除し, 内括約筋部尿道の機能を残した雑種雌成犬を使用し, 膀胱空虚時と部分的膀胱充満時の尿道内圧曲線を測定することにより, continence mechanism における交感神経 bata 作用の役割を検討した. その結果, 膀胱頚部より0.5cm遠位部の内圧は, 膀胱空虚時と部分的膀胱充満時で有意差はなかったが, 1.5cm遠位部の内圧は, 部分的膀胱充満時に有意 (p<0.02) に下降した. propranolol を前処置して同様の検討を行なったところ, 尿道内圧は, 膀胱頚部より0.5cm遠位部でも, 1.5cm遠位部でも有意差はなかった. 以上の結果より, 内括約筋犬という特殊な条件下ではあるが, 膀胱が充満してゆくにつれて, 内括約筋部尿道は, beta recepotr を介して弛緩してゆく反応のあることが示された. このことから, 内括約筋部尿道は, 弛緩することによって, continence mechanism に参画していることが推測された.
  • 腎動脈閉塞による偏側性虚血性腎障害の長期的観察と各種薬剤の虚血解除後投与の有効性に関する検討
    辻 祐治
    1987 年 78 巻 2 号 p. 281-291
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    予期せぬ腎虚血に対する有効な対応策を追及する目的で, 偏側性虚血性腎障害の長期的観察を行い, さらに各種薬剤の虚血解除後投与の有効性について比較検討を加えた. (1) 犬分腎尿採取モデル9頭の偏側腎動静脈を90分間完全閉塞し虚血性腎障害とし, 虚血腎および健常対側腎それぞれについて各種クリアランス法による腎機能を7週間にわたり観察した. その結果, イヌリンクリアランス (Cin) およびパラアミノ馬尿酸クリアランス (CPAH) は3週目まで, クリアチニンクリアランス (Ccr) は5週目まで虚血前ならびに健常対側腎と比較して有意に低下していたが, 7週目までには有意差を認めなくなるまでに回復した. このことからこの実験モデルの腎障害は可逆性であり, かつその虚血解除後早期におけるこれらクリアランス値の比較は各種薬剤の腎機能保護効果の検討に適当と判断された. (2) 次にこの実験モデル20頭を4群に分け, 対照としてなにも投与しなかった群と虚血解除直後に1回だけ経静脈的に mannitol, methylprednisolone, ATP-MgCl2を投与した群とし, 虚血解除後1週間の虚血腎腎機能の推移を比較した. その結果, methylprednisolone 投与群, ATP-MgCl2投与群の Cin, Ccr, CPAH については未治療群と同様な経過をとるのに対して, mannitol 投与群は有意に良好な回復を示したことから, mannitol の虚血解除後投与は予期せぬ腎虚血に対する有効な対応策と判断された.
  • 公平 昭男
    1987 年 78 巻 2 号 p. 292-296
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    γ-GTPは, 腎近位尿細管に最も高い活性を有することで知られている. 今回各種の腎腫瘍 (腎細胞癌13, ウイルムス腫瘍11, 腎盂腫瘍1, 腎血管腫1) 計16例について, その組織ホモジエネートを用いた biochemical な組織中のγ-GTP活性の測定, および凍結切片を用いた histochemical な組織中のγ-GTP活性の局在の検索を行った. その結果, 組織中のγ-GTP活性は, 正常腎皮質830.6±189.1mIU/mg of Protein (N=6), clear cell carcinoma 216.6+62.6 (7), granular cell carcinoma 2.7+1.4 (4), mixed type 15.2+7.2 (2), Wilms tumor 1.4 (1), Renal Hemangioma 0.4 (1), Renal Pelvic tumor 3.5 (1), 一方, histochemical には, 正常近位尿細管 brush border に強いγ-GTP活性の局在が認められたが腫瘍組織では, clear cell carcinoma における癌細胞細胞質にのみその局在が認められた. この組織細胞型とγ-GTP活性の差異との関連について検討し granular cell carcinoma は, clear cell carcinoma とことなり, 近位尿細管由来ではない可能性を示唆した.
  • とくに水, Naの排泄
    村山 猛男, 河辺 香月, 杉本 健藏, 新島 端夫
    1987 年 78 巻 2 号 p. 297-305
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎灌流によるCInと水, Na排泄を実験的高血圧ラットで検討した. まず灌流液による差をみるために, 生食水, ラクテック (ラクテート加リンゲル), 5%グルコース, 牛血清アルブミン加の生食水およびラクテックで5分間灌流した結果, ラクテックと生食水にほぼ同程度の, 水, Na排泄が得られたので, 一定灌流量 (1ml/min/100g体重) あるいは一定灌流圧 (150cmH2Oと200cmH2O) でSHRおよび post-DOCA高血圧症ラットの腎を生食水で灌流した. SHRでは, 5, 7, 9, 13週齢で検討したが, 5週齢よりすでに Wistar ラット腎に比してCInは低下しており, 水, Na排泄では7週齢以後明らかな低下をみた. Post-DOCA 高血圧症ラットの whole body におけるCInはコントロールの Wistar ラットと差がなかったが, CPAHは低下した. 一方, 腎重量あたりのCInでは明らかな低下をみた. Post-DOCA 高血圧腎では Wistar ラット腎に比して有意な水, Na排泄低下がみられた. 一定灌流量下の実験では, in situ の灌流のため腎神経のブロックは行われておらず, 一方一定灌流圧実験では体外灌流のため除神経状態下にある. 両群間での13週齢SHRにおける水排泄をみると除神経群で明らかな増加が見られた.
    以上の結果より post-DOCA 高血圧症ラットでは腎硬化性変化による水, Na排泄障害のため高血圧が維持されており, SHRでは高血圧形成あるいは維持に水, Na排泄障害が関与し, 高血圧維持期においては腎神経が水, Na排泄に関係している可能性が考えられる.
  • 特にモルヒン内服について
    井上 武夫, 長田 尚夫, 高橋 剛, 工藤 治, 黒子 幸一, 吉尾 正治, 黒田 俊, 山越 昌成, 中野 勝, 浜尾 巧, 大山 登, ...
    1987 年 78 巻 2 号 p. 306-310
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和56年4月から昭和61年3月までの泌尿器科の悪性腫瘍末期患者31名に, 鎮痛のため塩酸モルヒンを経口投与した. 20~30mg/日より始めて2日毎に増量し, 鎮痛する量を決めた. 投与法は4時間毎, 1日6回を厳守した. 22例が鎮痛され有効率は71%であった. 投与量は最小20mg/日, 最大150mg/日, 1日平均53mg, 投与日数は最短3日, 最長265日, 平均74日であった. 200日以上投与の4例を除くと平均51日であった. 副作用は便秘, 嘔吐, 傾眠, 幻覚などであったが重篤ではなかった. 疼痛が軽くなると, 休薬, 減量も可能で, 肉体的, 精神的依存性は全くみとめられなかった. 癌性疼痛に麻薬の適量はない. 鎮痛が得られるまで大胆に使用してよい. 死を目前にした50日間を疼痛で苦しまないように十分麻薬を使用し, 人生の最後を安らかに迎えられるように援助したい.
  • 山口 千美, 小川 由英, 諸角 誠人, 田中 徹, 北川 龍一
    1987 年 78 巻 2 号 p. 311-318
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットの実験的蓚酸カルシウム尿路結石症を用いて, クエン酸回路中間体のリンゴ酸, コハク酸およびそれらのナトリウム塩, 重炭酸ナトリウムの結石形成抑制におよぼす影響を比較検討した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群, 重炭酸ナトリウム群では, 尿中クエン酸排泄および尿中クエン酸濃度は増加したが, リンゴ酸群, コハク酸群では寧ろ減少した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群では, 著しい結石形成抑制作用を認めたが, 重炭酸ナトリウム群ではそれ程強くなかった. リンゴ酸群, コハク酸群では抑制作用は殆ど認められなかった. これらの物質の投与による尿中蓚酸, カルシウム, マグネシウムの各群間比較による有意差は認められなかった. 以上より, リンゴ酸ナトリウム, コハク酸ナトリウム投与により蓚酸結石形成は抑制され, その作用は尿中クエン酸濃度の増加が関与することが示唆された.
  • 田中 成美
    1987 年 78 巻 2 号 p. 319-326
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路感染症における白血球などの貪食細胞の果たす役割と immunomodulator による貪食細胞の機能亢進の可能性を調べるため, 貪食細胞の殺菌力が低下している beige マウス (Chédiak-Higashi 症候群の動物モデル) を用いて尿路感染実験を行った. Imunomodulator として Corynebacterium parvum の死菌液を使用し, 感染24時間後の生菌数定量により, その効果を検討した. Escherichia coli TN648株に対する beige とC57BL/6マウスの膀胱上皮細胞の附着性に差がないことを in vitro adherence test で確めた. 腹腔内感染では, beige マウスはC57BL/6マウスより高い感受性を示した. C. parvumは beige マウスにもC57BL/6マウスにも感染抵抗力の増強効果を示した. 尿路感染実験では, 自由に飲水させた群では beige とC57BL/6マウスの膀胱内における生菌数に差がなく排尿による washout mechanism の効果のためと考えられた. しかし, 腎臓内の生菌数は beige マウスの方が明らかに多くさらに48時間の絶水または5%グルコース水の飲用の条件下では beige マウスの膀胱内生菌数が有意に多くなり, それは貪食細胞の殺菌力の差があらわれたものと考えられた. C. parvum の投与によりC57BL/6マウスや免疫不全マウスである beige マウスにも膀胱内生菌数の有意な減少がみられ, 貪食細胞の機能亢進の効果があったことを示した.
  • 特に adriamycin, cyclophosphamide, cisplatin による3剤併用化学療法 (ACE) について
    鳶巣 賢一, 松本 恵一, 高井 計弘, 垣添 忠生
    1987 年 78 巻 2 号 p. 327-334
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1983年6月から, 1984年4月までの間に11例の進行尿路上皮癌症例の術前, および術後に, ACE化学療法 (adriamycin, cyclophosphamide, cisplatin) を, さらに補助療法としてNEO化学療法 (cyclophosphamide, neocarzinostatin, vincristine) を施行した.
    術前ACE化学療法施行群7例のうち, 扁平上皮癌であった1例を除き, すべてに何らかの効果がみられた. 特に前治療として放射線治療や他の化学療法の既往のない3例で著明な抗腫瘍効果がみられた. しかし, このような著明な効果が得られた症例でも術後8~10カ月には再発し, 全体としての予後は, 平均14.7カ月であった.
    術後のみACE, およびNEO化学療法が施行された4例のうち, 1例のみ32カ月経過後, 癌なし生存を続けているが, 他の3例は術後それぞれ, 3, 6, 8カ月に癌死した.
    ACE化学療法の副作用として, 悪心, おう吐, 脱毛, 骨髄抑制がほぼ全例に認められたが, 高齢者にも十分耐えうる治療法であった.
    われわれの施行した adriamycin, cyclophosphamide, cisplatin によるACE化学療法は, 確かに一定の効果が得られるが, 全体としての予後の改善には寄与しなかった. 今後さらに新しい工夫が必要と思われた.
  • シスプラチンを主剤として
    白浜 勉, 山下 淳一, 萱島 恒善, 陳 英輝, 柿木 敏明, 落司 孝一, 川原 元司, 大井 好忠, 小野原 信一, 篠原 慎治
    1987 年 78 巻 2 号 p. 335-340
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    17例の膀胱癌に2チャンネルー時的血流遮断併用昇圧動注療法を施行した. 使用した制癌剤は主としてCDDPである. 評価可能症例は13例であり, その有効率は77%であった. 有効例はすべてCDDP投与量90~165mg/body (平均137mg/body) の一回の本療法で反応を示した. 進行膀胱癌の5症例では, 著明な腫瘍縮小と downstaging が得られたため curative TUR-BTを施行することが可能であった.
    本療法は安全な手技であり簡単に施行できる. また, 重大な副作用は認められなかった.
    通常の動注療法よりも比較的少量のCDDP投与量で良好な抗腫瘍効果が期待できるので, 手術不能の進行膀胱癌に対して本療法は有用であると評価できた.
  • 小倉 朱生, 亀井 義広, 藤田 幸利
    1987 年 78 巻 2 号 p. 341-345
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    先天性眼奇形と46XX, t(11; 13)(p13; p11) の染色体異常を伴う Wilms 腫瘍の1例を経験した. 現在まで Aniridia-Wilms' tumor 症候群の本邦報告例は13例しかなく, 本症例は14例目であった。
    患者は1歳女児で, 生下時体重2,480g, 生後3カ月で先天性散発性無虹彩症, 眼振, 緑内障, および黄斑部低形成症を認めている. 家族歴に, 無虹彩および他の奇形はみられない. 患児は1歳時, 腹部腫瘤を主訴に来院, Aniridia-Wilms' tumor 症候群と診断された. 左腎摘除術後, 腫瘍床には Linac 照射, および Acrinomycin-D, Vincristin の化学療法が, 間欠的に施行された. 術1年後, で対側への腫瘍再発は認められなかったが, 化学療法中 Staphylococcal scalded skin syndrome および肺炎を併発し死亡した.
    先天性散発性無虹彩症を持つ, 特に11染色体に異常がある小児では, Wilms 腫瘍の発生を考慮し, US又はIVPによる生後早期からの follow up が重要であることを強調し, 報告した.
  • 那須 保友, 武田 克治, 公文 裕巳, 森岡 政明, 大橋 輝久, 大森 弘之
    1987 年 78 巻 2 号 p. 346-350
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Androgen 分泌を伴った副腎皮質腺腫の1例を報告する. 症例は, 31歳, 女性で多毛, 無月経, 高血圧, 全身倦怠感を主訴に受診した. Cortisol の日内変動は消失し, ACTHは測定感度以下であり, dexamethasone suppression test, rapid ACTH test は反応を示さず内分泌学的には Cushing 症候群のパターンを示した. さらに, testosterone, DHEA, DHEA-Sの高値を認めた. CT-scan, scintigram にて左副腎腫瘍を認め, 摘出術を行った. 組織学的には副腎皮質腺腫と診断されたが, 電顕的には良性, 悪性の鑑別は困難であった. 腫瘍組織内のホルモン濃度を測定したところ, testosterone の高値を認めたが癌腫症例ほどの高値ではなかった. Cushing 症候群において男性化症状をきたす場合, 癌腫であることが多いとされているが, 内分泌学的検討にて良性か悪性かを判定することは困難と考えられた.
  • 木村 光隆, 松原 正典, 諏訪 純二, 松山 恭輔, 宍戸 悟, 千野 一郎
    1987 年 78 巻 2 号 p. 351-355
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    フェナセチン乱用によると思われる腎盂腫瘍の1例を経験した. 症例は46歳女性. 1957年より頑固な頭痛出現し, 市販の鎮痛剤を多い時には常用量の2~3倍服用するようになった. 1978年頭痛を主訴に当院内科入院, 心因性頭痛, フェナセチン腎症, 鎮痛剤常用による白血球減少症の診断を受けた. 当時の排泄性尿路撮影で左萎縮腎が見られたが, 右腎盂像には異常は認められなかった. 1982年内科再入院し, 精査加療中, 同年11月頃より肉眼的血尿出現し, 1983年4月25日当科依頼された. 逆行性腎盂撮影にて右腎盂に陰影欠損を認め, 尿細胞診は Class IV であった. 右腎盂腫瘍と診断し, 同年7月5日右腎尿管全摘術施行した. 病理組織診断は移行上皮癌, Grade 2, pT1aであった. 腎実質は間質性腎炎の像だった. 術後, 腎機能低下が見られBUN40mg/dl台, Creat 3.0mg/dl台を示したが, 一定しているため, 同年8月11日退院となった. 術後32カ月の現在, 腎機能はBUN 47.1mg/dl, Creat 4.6mg/dlとやや上昇傾向を示すが, 一般状態は良好で経過観察中である. 尚, 再発, 転移の徴候は見られない.
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