日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
膀胱腫瘍の予後因子としての Thomsen-Friedenreich antigen の検討
小林 弘明小幡 浩司安藤 正
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 78 巻 4 号 p. 674-679

詳細
抄録

1975年より1985年までに当院を受診した膀胱腫瘍患者中, 経過観察が可能であった91例について, ABH型血液型物質と異なる細胞膜抗原であるMN型抗原の precursor であるとされている Thomsen-Friedenreich antigen (以下T-Agと略す) の有無を Avidin-Biotin-Peroxidase Complex (ABC) 法を用いて調べ, その抗原性の消失と腫瘍の異型度, 深達度との関係, 再発率, 生存率との関連などを検討した.
正常組織中, T-Agは siliac acid に mask された cryptantigen の形で存在するためT-Ag陰性でかつ Cryptic T-Ag陽性の場合を抗原性正常とした. 検索を行なった膀胱腫瘍91例中46例 (51%) においてT-Ag陽性または Cryptic T-Ag陰性 (以下抗原性消失群と記す) であった. 抗原性の消失は, Grade I 32例中11例(34%), Grade II 32例中15例 (47%), Grade III 27例中20例 (74%), low stage (<T2) 65例中27例 (42%), high stage (≧T2) 24例中18例 (75%) にみられ, high grade, high stage のものほど抗原性の消失率が高かった.
また膀胱保存手術のなされた67例中, 抗原性消失群の63%, 抗原性正常群の35%に再発がみられ, 再発率は有意に抗原性消失群において高かった. 生存率は異型度や深達度が同じでも, 抗原性が消失している方が抗原性の正常群よりも低い傾向をしめし, この傾向は推計学的有意差はないが, high grade, high stage ほど, より著しかった. 従って, 従来の Grade Stage などの組織学的診断に加えT-Agの有無を検討することは, 術後の再発率および予後を推測する上に参考になると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top