日本泌尿器科學會雑誌
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ラット精細管の電顕的細胞化学的研究
発育段階におけるホスファターゼ局在の変化
石田 仁男
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1987 年 78 巻 6 号 p. 973-981

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抄録

ラット精細管の生後発育を電顕的酵素細胞化学的に研究した. 各発育段階のウィスター系ラット精巣を用い, 酸性ホスファターゼ (ACPase, Gomori 法) とアデノシントリホスファターゼ (ATPase, Wachstein and Meisel 法) の局在を調べた. 経日的観察には同腹ラットを用いた. ACPase 活性は生後1週から精細胞およびセルトリ細胞のゴルジ装置とライソゾームに認められ, 成熟ラットに至るまで活性の強さに差はあれ局在部位は同一であった. 早期精子細胞の前先体顆粒, 初期の先体内には ACPase 活性が陽性であるが, acrosomal cap 形成以後では活性は消失した. ATPase 活性は生後13日に初めて出現し, 日を追って増強し18日齢では精細管全域に活性を認めた. 局在部位は精細胞とセルトリ細胞のゴルジ装置および両細胞系の形質膜外側であった. ATPase 活性の出現時期はセルトリ細胞の分化にともなう密着結合の形成および精母細胞の出現時期と一致した. 形質膜における ATPase 活性の局在はセルトリ細胞同士および精細胞とセルトリ細胞とが接する部分 (細胞間隙) であり, 精細胞同士の接する間隙には活性を認めなかった. 本研究は精細管の生後発育におけるホスファターゼ活性の出現と局在を初めて明らかにしたもので, 活性出現時期とその分布からセルトリ細胞が精細胞の分化に関与し, 特に代謝移送と関連することが示唆された.

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