日本泌尿器科學會雑誌
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ヒト腎細胞癌の化学療法に関する基礎的研究
Interferon と他薬剤との併用効果について
郷司 和男守殿 貞夫
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1987 年 78 巻 6 号 p. 982-990

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抄録

手術療法以外に有用な治療法の少ない腎細胞癌に対する化学療法について基礎的な研究をおこなった. 従来の制癌剤, Interferon (IFN) および polyamine 合成阻害剤α-difluoromethylornithine (α-DFMO) の併用効果をヒト腎細胞癌由来培養株細胞と手術摘除腎癌細胞を用い Salmon らの2層軟寒天コロニー形成法により検討した. 制癌剤単剤では有効な薬剤はなかったが, 作用時間を長くすることで抗腫瘍効果を得ることができた. またIFNおよびα-DFMO単剤でも有効例はなかったが, IFNと制癌剤およびIFNとα-DFMOの併用により, 多くの例で相加効果以上の抗腫瘍効果が示された. CDDPおよび5-FUではあらかじめ recombinant γ-interferon (rec γ-IFN) を作用後に, 新に rec γ-IFNと薬剤を加えたものにおいてその抗腫瘍効果は2剤同時投与に比べ, 著明に増強された. Rec γ-IFNおよびα-DFMO単剤作用時に比べこれら2剤併用時のKO-RCC-1細胞内 polyamine 含量は著明に低下しており, rec γ-IFNも細胞内 polyamine 代謝を阻害することが示唆された.
腫瘍が同一組織型であっても個々の患者でその薬剤感受性に大きな差が見られた. この事実は in vitro clonogenic assay 法などの薬剤スクリーニング法を用い, 個々の患者に最も有効な薬剤の組みあわせの選択が腎細胞癌の化学療法において重要であることを示している.

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