日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
尿路腫瘍関連抗原に関する検討
膀胱腫瘍におけるTPA (Tissue Polypeptide Antigen) の免疫組織学的検討
辻橋 宏典上島 成也朴 英哲秋山 隆弘栗田 孝井口 正典
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1988 年 79 巻 1 号 p. 35-43

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抄録

膀胱腫瘍における腫瘍マーカーとしての血清, 尿TPAの有用性についてはすでに報告したが, 今回おもに免疫組織学的手技を用いTPA (tissue polypeptide antigen) の腫瘍マーカーとしての性格を種々の観点から検討した.
組織TPAはホルマリン固定, パラフィン切片では抗原性の減弱が認められたので, 凍結切片を作成し検討した. 対象標本は膀胱腫瘍45例, 非腫瘍14例, 他臓器癌7例であった. 染色は酵素抗体間接法を用い, 同時に血清値, 組織濃度, CEA (carcinoembryonic antigen), ABH抗原と比較した. TPAの膀胱腫瘍における組織陽性率は71%であり, 正常, 他臓器癌に比し高値を示し, 3つの局在形式にわけられた. 細胞レベルでの局在部位は核ではなく細胞質, 細胞膜であった. 組織陽性率は異型度, 深達度間で有意の差はみられなかったが, 深達度間で局在の差が認められた. 血清値陽性率は組織陽性群で陰性群より高く, また血清値上昇には組織での局在部位も関与していると思われた. TPAの組織濃度は腫瘍染色陽性群において腫瘍染色陰性群, 非腫瘍群より高値を呈し, 血清値とも相関を示した. ABH抗原の陽性率は28%であり, ABH抗原陰性腫瘍においてTPA抗原陽性率が高い傾向を示した.
さらなる検討を要するが, 免疫組織学的検討よりTPAは膀胱腫瘍に有用な上皮性マーカーと考えられた.

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