日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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膀胱腫瘍に対する粘膜付着性抗癌剤の研究
上田 公介増井 靖彦岡村 武彦大田黒 和生井上 和彦
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1988 年 79 巻 1 号 p. 44-48

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抄録

膀胱腫瘍に対する膀胱内注入療法は世界中で広く行なわれている. しかし実際は, その殆どの薬剤が水溶性であるため, 短時間の内に尿と共に体外へ排出されてしまう. そこで我々は膀胱内に注入された薬剤が長期に滞留するような製剤を開発したので報告する.
我々が作製した薬剤は emulsion adriamycin solution (emulsion-ADM) と hydroxy propyl cellulose (HPC) adriamycin の2種類であり, ラットを用いて両薬剤の粘膜付着性について検討した.
結果は, 1) emusion adriamycin solution と従来の水溶性 adriamycin 製剤との間には差が認められなかった. 2) HPC-adriamycin 製剤を注入した4日目のラット膀胱組織中からは adriamycin が検出されたが, 従来の水溶製剤注入群のラット膀胱組織中からは adriamycin を検出できなかった.
以上より HPC-adriamycin は臨床的に膀胱腫瘍の治療に応用できると考えた.

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