日本泌尿器科學會雑誌
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骨盤内動脈遮断が陰茎海綿体におよぼす影響
陰茎海綿体血流変化の観察
高金 弘
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1988 年 79 巻 12 号 p. 1909-1918

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抄録

骨盤内動脈の遮断が陰茎海綿体の血流に与える影響を検討するために, 雑種成犬を用い, 骨盤神経非刺激時と電気刺激下の両条件時に, 骨盤内動脈を種々遮断し, その時の陰茎海綿体血流の変動を露出型関電極酸素電極法により測定した.
骨盤神経非刺激時, 5検体の陰茎海綿体の脱分極電流は, 骨盤内動脈を結紮しても低下を示さなかった.
骨盤神経刺激時の結紮では, (I) 片側内陰部動脈結紮により, 対側7検体の陰茎海綿体に有意の血流低下を認めた. (II) 片側の骨盤内血管のみを残した状態から, 内陰部動脈, 内腸骨動脈, 大動脈と順に結紮した際の7検体の同側海綿体の血流変化の比はおよそ2:1:4であった. (III) 内腸骨動脈レベルでの7検体の結紮では, 一側で左右海綿体とも約20%, 両側で左右海綿体とも約50%の血流低下を示した. (IV) 内陰部動脈レベルでの7検体の結紮では, 一側で左右海綿体とも約25%, 両側で左右海綿体とも約50%の血流低下を認めた.
以上の結果より, 両側内陰部動脈の交通枝, 副内陰部動脈等多くの骨盤内側副血行路が存在し, 同時にそれは, 局所動脈病変が陰茎勃起時の血流動態に影響を与えにくい役割を果たしていることが明らかとなった. 従って動脈性インポテンスとは, 動脈の局所病変よりも動脈硬化等血管全体の病変により発症する可能性が強く示唆された.

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