1989 年 80 巻 1 号 p. 104-110
左鎖骨上窩腫瘤, 血尿を契機として発見された右腎癌の63歳, 男性症例を報告した. ポイントは, 1) AFP産生性の腎癌であること, 2) きわめて進行した状態で発見され, かつ増悪していったこと (初診時腎門部, 傍大動脈, 上縦隔, 左鎖骨上窩リンパ節を伴う腎癌, 後に左鎖骨上窩リンパ節転移再発, 皮膚転移をみた), 3) 各種の治療 (右腎摘除術, 腹部リンパ節郭清, 上縦隔・左鎖骨上窩リンパ節郭清, その後左鎖骨上窩再発巣に対して温熱療法+放射線治療, 全身的には腫瘍浸潤リンパ球の静注療法) とAFPの動きが連動したことである. 腎癌の腫瘍マーカーとしてのAFPの意義, 本症例における各種の治療の適否, 意義を論じた.