日本泌尿器科学会雑誌
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先天性ホルモン欠損動物の精巣組織の研究
黒田 加奈美
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1989 年 80 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

胎生期より下垂体前葉の形成不全がみられ成長ホルモン (GH), プロラクチン (PRL), 甲状腺刺激ホルモン (TSH), 副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) のほとんどが欠如している Snell 下垂体性小人症マウス (dw), GH単独欠損症の little 小人症マウス (lit), 甲状腺が低形成を示し血中サイロキシン (T4) は測定不能で逆にTSHが異常に高い先天性原発性甲状腺機能低下症マウス (hyt), 以上3種類の先天性ホルモン欠損動物のうちホモ接合体である dw/dw と hyt/hyt の雄は不妊であるが, lit/lit に関しては明確でない. dw/dw にGH+T4, lit/lit にGH, hyt/hyt にはT4を出生直後より投与する早期回復実験を行ない各々のマウスでの正常対照群, 未治療群, 治療群における40日齢の精巣を摘出し, 造精過程を形態学的に検索し比較検討した.
3種類のマウス (dw/dw, lit/lit, hyt/hyt) のすべてにおいて, それぞれの対照群と比較して spermatogonia 数, spermatocyte 数, spermatid 数, sperm 数の全部を合計した総造精細胞数は著明に減少しており, またその総細胞数の減少はホルモン投与で良好に改善されていた. なお, 対照群と比べて dw/dw 群では spermatid 数, lit/lit 群で sperm 数, hyt/hyt 群で spermatid 数と sperm 数の減少が著明であった.
この実験よりGHとT4が造精機能に関与している事が示唆された.

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