日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎における尿中NAGの診断的意義について
魚住 二郎岩坪 暎二安藤 三英浜野 克彦原 三信
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 80 巻 1 号 p. 54-58

詳細
抄録

脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎において尿中NAGを測定し, その診断的意義について検討した. 脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎31例中23例 (74%) で尿中NAGの上昇がみられた. また対照群として各種の尿路生殖器感染症についても尿中NAGを測定した. 非脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎7例中4例 (57%) で尿中NAG上昇がみられたが, 下部尿路感染症の急性単純性膀胱炎20例, 慢性複雑性膀胱炎11例, 尿道炎6例のうち尿道炎の1例 (17%) を除いて尿中NAGの上昇はなかった. 生殖器感染症の急性前立腺炎9例, 急性副睾丸炎9例のうちそれぞれ6例 (67%), 5例 (56%) で尿中NAG上昇がみられ, 急性腎盂腎炎の診断に尿中NAG値を参考にする場合にはこれらの疾患を考慮にいれる必要がある. 脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎31例について尿中NAGと発熱, 末梢白血球数との関係について検討を試みたが, 膿尿あるいは細菌尿に加えて38℃以上の発熱と10,000以上の白血球増多を示すような典型的症例16例中11例 (69%) で尿中NAG上昇がみられたのみならず, 38℃以上の発熱か10,000以上の白血球増多の一方しか伴わない症例でも15例中12例 (80%) で尿中NAGの上昇がみられた. 複雑な病態を有し, 急性腎盂腎炎の診断が容易ではない脊髄損傷患者において尿中NAGの測定は有用な補助検査法と思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top