日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱癌における血液型同種抗原およびレクチンを用いた糖組織化学的研究
八木 静男
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1989 年 80 巻 5 号 p. 682-690

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抄録

膀胱癌細胞における血液型同種抗原の発現と糖鎖の局在, 分布について癌の進展, 悪性化との関連を明確にするために免疫組織化学的に検討した.
最近7年間に鹿児島大学泌尿器科で施行された48例の膀胱全摘除術の標本を材料として用いた. 移行上皮癌G1 4例, G2 21例, G3 20例と扁平上皮癌3例である. 経尿道的前立腺切除術の際に採取された6例の正常膀胱組織を対照とした.
血液型抗原の検索には抗A, B及びHモノクローナル抗体, レクチン染色には, GSI-A4, UEA-1, LTA-M, BPA, DBA, 及びPNAの6種類のレクチンを用いた.
血液型抗原の陽性率は high grade 程陽性率が低く, G1 75%, G2 57.9%, G3 33.3%であった. 担癌非腫瘍部における陽性率も同様の傾向を示した.
腫瘍部におけるレクチン染色の反応性は, GSI-A4, BPA, PNAでは high grade 程陽性率が高く, DBAでは低下した. 担癌非腫瘍部ではLTA-M, BPA, DBA, PNAは全く染色性を示さなかった. 深達度別では染色性に有意差はみられない. INF-αよりもINF-β, rの方が染色性が高い傾向にあった. 原発巣がLTA-M陽性例では70%がリンパ管侵襲 (ly) 陽性であり, 55%にリンパ節転移を認めたが, 陰性例では全くリンパ節転移を認めず, LTA-M結合末端糖鎖の重要性が示唆された.

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