日本泌尿器科学会雑誌
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ヒストグラム解析による雄家兎外尿道括約筋の組織化学的検討
岡村 廉晴徳中 荘平宮田 昌伸藤井 敬三水永 光博橋本 博八竹 直
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1989 年 80 巻 8 号 p. 1127-1133

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抄録

雄家兎外尿道括約筋を構成する筋線維型について組織化学的方法 (ATP-ase染色) を用いて明らかにした後, 筋線維型別のヒストグラム解析を行った. 家兎外尿道括約筋は, 全体として速筋型筋線維が優位 (87.3%) であるが, その分布は一様ではなく, 尿道内腔からの距離によって異なっていた. すなわち, 遅筋型筋線維 (Type1) は, 尿道内腔に近い内層に比較的多く (33.4%) 分布するが, 外層にはほとんど認められなかった. いずれの層における筋線維型別ヒストグラムも, 正常な釣鐘型の分布曲線であった. Type1およびType2の平均筋線維径はそれぞれ14.7μm, 20.5μmであり, 有意に速筋型筋線維の方が大きかった. 3種類の筋線維いずれも外側に向かうに従って筋線維径は増大する傾向にあり, いずれの層においても遅筋型より速筋型筋線維のほうが大きかった. 構成する筋線維の割合とその筋線維径は, 内層と外層とでは確かな相違が存在している事から, この両者は異なった機能を分担していると考えられる. すなわち, 内層は持続的な緊張を保ち, 外層は短時間の急速な収縮にそれぞれ与っており, 神経制御のあり方も異なっている可能性が考えられる. さらに, 家兎外尿道括約筋を構成している筋線維の中でも, 短時間の急速な収縮に関与する筋線維ほど径が大きいとの結果は, 家兎の頻回に尿線を急速に止めるという排尿機構上の必要性により生じてきたものと推察された.

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