日本泌尿器科学会雑誌
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MTT-assay を用いたヒト膀胱癌細胞株の制癌剤感受性試験
澤村 正之小田島 邦男長倉 和彦中村 宏
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キーワード: 膀胱癌, 抗癌剤感受性
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1989 年 80 巻 8 号 p. 1195-1202

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抄録

代表的なヒト膀胱移行上皮癌由来の細胞株T-24, MGH-U1, KU-1の5種類の制癌剤に対する感受性について比較した. doxorubicin (DOX), mitomycin C (MMC), cis-diamminedi-chloroplatinum (II) (CDDP) については42℃温熱負荷併用の影響も併せて検討した. また, 細胞数算定方法として一般に用いられている dye exclusion assay (DEA) と, 最近注目されている3-(4,5-dimetylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT) を用いた比色法 (MTT-assay) を行い, MTT-assay の有用性についても検討した.
3種類の細胞を96-well multiplate に接種し, 48時間培養した後にDOX, MMC, CDDP, bleomycin (BLM) および peplomycin (PEP) の5種類の制癌剤と2~48時間接触させ, 48時間後にDEAとMTT-assay を行い生細胞数を算定した.
5種類の制癌剤のうちDOX, MMCおよびCDDPは, 6時間以上の接触において3種類の細胞に対して強い増殖抑制作用を認めた. 特にDOXは, 2時間接触群においても膀胱移行上皮癌細胞に対して有効に作用することが確認された. 一方, BLMとPEPに対する感受性は3種類の細胞とも低かった. 42℃温熱負荷によってMMCでは各細胞で, CDDPではMGH-U1で, それぞれ2時間接触時のIC50値が約2分の1に低下し, 温熱増感を認めた. DOXでは温熱負荷による影響は認めなかった.
3種類の細胞において, MTT-assay で求めた吸光度はDEAによる生細胞数を反映し, 両 assay で求めたIC50値には推計学的有意差はなかった. MTT-assay は半自動的に行え, 再現性に優れており, 今後DEAに代わり得る有用な assay 法であると思われた.

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