日本泌尿器科学会雑誌
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偶然に発見された腎癌の検討
五十嵐 辰男村上 信乃富岡 進阿部 功一井坂 茂夫岡野 達弛島崎 淳松嵜 理
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キーワード: 偶然発見, 腎癌
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1989 年 80 巻 9 号 p. 1310-1315

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抄録

1978年1月より, 1988年7月までに, 千葉大学および旭中央病院泌尿器科で腎摘除術を施行した151例を集計した. 偶然に発見された腎癌 (「偶然発見癌」) は41例であり, 受診動機としては他疾患治療中が28例, 人間ドックが10例, 集団検診3例であった. このうち, 34例 (82.9%) が超音波断層法で, 4例がCTスキャンで, 3例が排泄性腎盂造影で最初に発見された.「偶然発見癌」の腎癌全体に占める割合は, 年次を経るにつれて有意に増加した(p<0.001). 初診時または発見時, 顕微鏡的血尿を認めたのは8例 (19.5%) に過ぎず, スクリーニングとして検尿のみでは不十分で, 超音波断層法も必要であると思われた.
なんらかの症候を有する「症候癌」は102例, 転移巣が最初に診断される「オカルト癌」は8例であった.「偶然発見癌」はこれらに比し有意に low stage (p<0.001), low grade (p<0.001) であった. さらに, pT1~2b, または長径10cm以下の症例において「偶然発見癌」の生存率は「症候癌」より良好であり (p<0.05), このような症例では腫瘍の早期発見による治療効果があったと思われた.

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