日本泌尿器科学会雑誌
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特異な経過および形態像を呈した陰茎部癌の1例
田所 茂堀場 優樹名出 頼男黒田 誠
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1991 年 82 巻 1 号 p. 139-142

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抄録

症例は75歳男性で, 虫垂切除術時, 陰茎部を中心とした広範囲なびらんが認められた. 陰茎部病変は, 約10年前より存在し, 徐々にひろがってきたが放置していた. 病変部は, 境界明瞭, 鮮紅色湿潤, びらんの所見で, 陰茎包皮全周, 恥骨上部, 陰嚢部, 外尿道口部までひろがっていた. 生検では確定診断はつかなかったが, 乳房外 Paget 病が強く疑われたため, まず bilateral modified inguinal lymphadenectomy および全身的精査をおこない, 転移のないこと, 他臓器癌の合併がないことを確認し, 広範囲皮膚切除術, 皮膚欠損部に対する形成術を施行した. 病理組織学的に, 摘出標本の大部分は炎症性びらんの所見であったが, 一部に低分化扁平上皮癌の所見を認めた. 臨床経過, 病理特殊染色標本の所見などから, 紅色肥厚症を基盤として発生した低分化扁平上皮癌と診断した. 現在術後18ヵ月となるが, 局所再発, 転移の所見は認められない.

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