日本泌尿器科学会雑誌
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N-Butyl-N-(4-Hydroxybutyl) nitrosamine によるマウス膀胱癌の進展に対する陽子線照射の効果
大谷 幹伸宮永 直人野口 良輔小磯 謙吉辻 比呂志有本 卓郎稲田 哲雄北川 俊夫辻井 博彦田中 良典鳶巣 賢一垣添 忠生
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キーワード: 陽性続照射, 膀胱癌, マウス
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1991 年 82 巻 5 号 p. 821-825

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抄録

C3H/He雌マウスに対し, 0.05%のN-Butyl-N-(4-Hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) を飲料水として18週間与えた. 19週目に11頭のマウス (第3群) を屠殺して, 全てに膀胱癌が発生していることを確認した. 残りのマウスは二つの群に分け, 第1群は骨盤全体に20Gyの陽子線を照射した. 一方第2群は, 照射を行なわない対照群とした. 照射の3週間後全てのマウスを屠殺し, 膀胱を切除した. 膀胱はホルマリン固定後に重量 (≒癌の重量) の測定と, 組織学的検索を行なった. 膀胱の平均重量 (≒癌の重量) は, 第1群で67.7mg, 第2群で120.6mg, 第3群で106.5mgであって, 第1群との間にそれぞれ有意な差が認められた (p<0.05). また表在癌 (pT1) と深部浸潤癌 (pT2~3) の頻度は, 第1群で10/18 (56%) と8/18 (39%) であった. また第2群のそれは, 3/17 (18%) と14/17 (82%), 第3群のそれは2/11 (18%), 9/11 (82%) であった. 第1群と2群間に有意な差 (p<0.05) が認められた. しかし第1群と第3群との差は有意ではなかった (p=0.068). これらの結果はマウスの膀胱癌に対して, 陽性線照射が有効な治療法であることを示唆している.

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