日本泌尿器科学会雑誌
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腎盂尿管癌における脈管侵襲に関する検討
蓮井 良浩小林 隆彦山下 康洋西 昇平北田 真一郎長田 幸夫
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キーワード: 腎盂尿管癌, 脈管侵襲, 予後
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1992 年 83 巻 9 号 p. 1436-1441

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抄録

1979年7月より1990年9月までの間に経験した腎盂尿管癌患者で, 組織学的に脈管侵襲の有無の検討が行われた45例を対象として, 脈管侵襲と予後や他の病理組織学的因子との関連および術後補助化学療法の効果について検討を行った. 脈管侵襲は45例中25例 (55.6%) に認めた. 脈管侵襲陽性例は grade3 の15例中14例 (93.3%), pT3以上の23例中21例 (91.3%) に認められ, high grade および high stage の癌において脈管侵襲を伴う頻度が高かった. 脈管侵襲陽性群25例中22例 (88%) に術後転移が認められ, 陰性群20例中4例 (20%) に比べ有意に高頻度であった (p<0.01). 脈管侵襲陽性群の5年生存率は13.1%で陰性群の80.6%に比べ有意に不良であった (p<0.005). 脈管侵襲をリンパ管侵襲と血管侵襲に分けて予後をみても, リンパ管侵襲陽性群の5年生存率は18.2%と陰性群の62.2%に比べ有意に低く, また血管侵襲陽性群の5年生存率も8.93%で陰性群の65.9%と比べ有意に低かった (p<0.005). 脈管侵襲陽性例で術後 cisplatin を含む療法を施行した群の3年生存率は34.3%で, cisplatin を含まない療法を施行した群の17.8%と比べて有意差を認めず, 予後不良であった. 以上の結果より, 脈管侵襲は腎盂尿管癌の予後因子の1つと考えられ, 脈管侵襲を伴う患者にはより有効な術後療法が必要と思われた.

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