抄録
経直腸的超音波断層像を基に, 前立腺輪郭をブック型パソコンを用いて三次元表示するプログラムを作成し, 臨床上の有用性を検討した. 前立腺癌, 前立腺肥大症, 正常例各1例における前立腺の輪郭の三次元表示では, 正常例では, 前立腺が平たい形状をしていること, 肥大症になると, 球形に近づくが, 前立腺の軟らかさを反映して直腸面は窪んでいること, 癌になると, 前立腺の硬度が増すため直腸内のプローブの圧迫の影響を受けず, 直腸側へも突出すること, 表面の凹凸不整を認めること, などが表示され, それぞれの特徴が表示し得た. 酢酸クロルマジノンを長期投与されるうちアンチアンドロゲン療法耐性となった肥大症患者2例で, 前立腺輪郭の経時変化を三次元表示した. 1例では前立腺全体が均等に縮小しその後また全体が均等に再増大したことが示されており, もう1例では, 前立腺の尖部近くが主に縮小したのに対し膀胱側はほとんど縮小しておらず, その後再増大した際には尖部だけでなく膀胱側も増大していることが示されていた. 前立腺の輪郭の経時変化を三次元表示すると, 全体像が把握しやすく, どの部位が主に変化したかがわかりやすく, 三次元表示技術は経過観察において有用であることが示唆された.