日本泌尿器科学会雑誌
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腎移植の免疫抑制療法
中村 宏
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1993 年 84 巻 8 号 p. 1359-1384

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抄録
1961年にアザチオプリンが合成され, 直ちに維持療法の主流となった. 同じ頃コルチゾンが拒絶反応の治療に有効なことが認められた. しかしアザチオプリンもステロイドもほとんどすべての免疫学的及び炎症反応に影響を及ぼし, 感染とある種の悪性疾患の原因になると考えられた. 第2世代の免疫抑制剤である抗リンパ球グロブリン (ALG) は, 異種血清に由来し, 細胞性反応全般に向けられた多クローン抗体の形で現れた. しかし残念なことにALGの投与に関して, 多くの制約がみられた. シクロスポリンAはより特異性があり, リンパ球の中のTヘルパー・リンパ球を攻撃する. シクロスポリンは現在のところアザチオプリンよりも優れた免疫抑制剤であるが, 多くの副作用がなくはない. その中でも腎毒性は, シクロスポリンの投与を受けている患者にとって最もやっかいな合併症である. 泌尿器科的腫瘍学者にとって極めて重要となったハイブリッド形成の技術の出現が, 移植にも大きな影響を与え, 新世代の抗リンパ球抗体の発展をもたらした. すべてのTリンパ球にみられる, T3抗原複合体に向けられた単クローン抗体であるOKT3の, 大掛りな臨床成績が得られている. 多くの多施設共同研究によると, OKT3の効果は著しく, 末梢血からT細胞を急速に除去し, 旧来から行われている大量のステロイド療法に反応しなかった拒絶反応にも有効で, 拒絶反応の頻度を減少させ, その発生を遅らせる.
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