1995 年 86 巻 5 号 p. 1064-1067
発熱, 食欲不振と体重減少を主訴として62歳の男性が来院した. 腹部CT, 選択的血管造影で左副腎をほぼ占領する腫瘍を認め, 画像診断上, 左副腎の悪性腫瘍が疑われ, 経腹的副腎腫瘍摘出術を施行した. 摘出標本は8×4×6cmで, 重量は117gであった. 病理組織学的には大型の異型核をもち, 核小体の明瞭な腫瘍細胞が密に増殖しており, 一部では腫瘍細胞が不明瞭な血管腔様の配列を呈していた. 免疫組織染色では一部の腫瘍細胞の細胞質内に抗第VIII因子抗体陽性の顆粒が認められた. 以上より, 副腎原発の血管肉腫と診断した. 副腎の血管肉腫は極めて稀で, 自験例が8例目であった.