非癌腎組織, 腎癌組織および尿路上皮癌組織から cathepsin B様物質を抽出精製し, その特性について比較した. 組織抽出液からの精製は Sephadex G-25カラムクロマトグラフィーおよびDEAE-Sephacel, CM Bio-Gelを用いたイオン交換クロマトグラフィーで行い, 定性は benzyloxy-carbonyl-L-arginine-4-methyl-7-coumarylamide (Z-Arg-Arg-MCA) を基質として用いた cathepsin B様活性値の測定と共に, 10% sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis (10%SDS-PAGE), 抗ヒト肝 cathepsin B抗体を用いた western blot で行った.
非癌腎組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000であったのに対し, 腎癌組織および腎盂癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられた. 膀胱癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は high stage の腫瘍では分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられたが, low stage の腫瘍では約28,000のもののみであった.
尿路癌組織では cathepsin B様プロテアーゼが産生されており, より分子量の大きい cathepsin B様プロテアーゼは癌の浸潤過程に重要な役割を果たすものと考えられた.