日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
尿路癌における cathepsin B様物質の検討
上田 光孝
著者情報
キーワード: 尿路癌
ジャーナル フリー

1995 年 86 巻 9 号 p. 1429-1434

詳細
抄録

非癌腎組織, 腎癌組織および尿路上皮癌組織から cathepsin B様物質を抽出精製し, その特性について比較した. 組織抽出液からの精製は Sephadex G-25カラムクロマトグラフィーおよびDEAE-Sephacel, CM Bio-Gelを用いたイオン交換クロマトグラフィーで行い, 定性は benzyloxy-carbonyl-L-arginine-4-methyl-7-coumarylamide (Z-Arg-Arg-MCA) を基質として用いた cathepsin B様活性値の測定と共に, 10% sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis (10%SDS-PAGE), 抗ヒト肝 cathepsin B抗体を用いた western blot で行った.
非癌腎組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000であったのに対し, 腎癌組織および腎盂癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられた. 膀胱癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は high stage の腫瘍では分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられたが, low stage の腫瘍では約28,000のもののみであった.
尿路癌組織では cathepsin B様プロテアーゼが産生されており, より分子量の大きい cathepsin B様プロテアーゼは癌の浸潤過程に重要な役割を果たすものと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top