日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌における Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA) の発現
関 晴夫永森 聡小柳 知彦
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キーワード: 腎癌, 増殖分画, PCNA
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1995 年 86 巻 9 号 p. 1475-1482

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抄録

(目的) 腎細胞癌におけるPCNA陽性率と病理学的所見, 核DNA量, 予後との関係を検討した.
(方法) 腎細胞癌40例より総計151検体のホルマリン固定パラフィンブロックを選択し, 抗PCNA抗体による免疫組織化学染色を行った. PCNA陽性細胞の割合を Labeling Index (LI; %) として算定した. 同一検体に対し flowcytometry を用いて核DNA量解析を行った.
(結果) 1) LIと異型度の関係; G1 (n=16) のLIは2.79±3.33 (mean±SD) であり, G2(n=20) では5.63±4.08, G3 (n=4) では9.95±4.59であり, G1とG3の間に有意差を認めた (p<0.05).
2) LIと進展度の関係; pT2 (n=22) のLIは3.22±3.05であり, pT3以上 (n=18) では7.01±4.99とpT2より有意に高値を示した (p<0.05).
3) リンパ節転移, 遠隔転移の有無に関してはLIに有意差は無かった.
4) LIと核DNA量; DNA diploid (n=17) のLIは2.41±3.14であり, DNA aneuploid (n=23) のLIは6.80±4.29とDNA diploid より有意に高値を示した (p<0.05).
5) 核DNA量に clonal heterogeneity が存在するのに平行してLIにも腫瘍内の部位により値のばらつきが存在することが示唆された.
6) LIと予後の関係; Liが5.0%以上 (n=15) の5年生存率は40%であり, LIが5.0%未満 (n=25) では74%であり有意差を認めた (p<0.05).
(結論) 抗PCNA抗体により算定した腎細胞癌のLIは増殖能を示すと共に悪性度の評価に有効な指標になりうると思われた.

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