1997 年 88 巻 9 号 p. 778-787
(目的・方法) エリスロポエチン (Ep) 産生腎細胞癌より新しいEp産生細胞株 (仮称: KU-Ep) を樹立した. その特性について解析を行い, 更にcAMPの役割について検討を行った.
(結果) ヌードマウスに可移植性で腫瘍重量とEp値及びヘマトクリット値間に相関を認めた. 腫瘍は原発巣同様淡明細胞優位で免疫染色で細胞内に顆粒状に陽性反応を認めた. 電顕的免疫染色では粗面小胞体の一部及び核膜周囲腔に陽性反応を認めた. 細胞培養では倍加時間48時間で, 増殖期よりEpを産生した. 染色体分析では染色数114~147と分散し, 複雑な核型異常及び marker 染色体を認めた. EpのmRNAはRT-PCR法で確認した. 培養細胞はcAMP刺激物質である forskolin に反応し培養上清及び細胞内のEp量が増加した.
(結論) 本細胞株においてcAMPが細胞内Epの生合成及び放出に深く関与していると考えられた.