日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
術後再発様式からみた腎細胞癌の至適経過観察プロトコール作成の試み
村本 将俊岩村 正嗣石井 淳一郎馬場 志郎
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 91 巻 12 号 p. 700-707

詳細
抄録

(目的) 転移を認めない腎細胞癌患者の術後至適経過観察プロトコールを作成する為に, 腎摘除術を施行した患者における臨床経過を検討した.
(対象と方法) 1972年3月から1999年7月に至る27年間に北里大学病院泌尿器科で根治的腎摘除術または腎部分切除術を施行された腎細胞癌pT1-3N0(Nx)M0の265例を対象とし, 臨床病理病期と初発再発期間, 転移部位, 再発時症状の有無を検討した.
(結果) 平均観察期間50ヵ月 (1~244) のうち, 265例中45例 (17%) に術後1~108ヵ月 (平均33.3ヵ月) で再発を認めた. 再発は3年以内に60%, 6年以内に87%が診断された. 再発患者における原発巣の病理病期別再発率, 根治術後の平均再発期間はそれぞれpT1; 9.0%, 43.6ヵ月, pT2; 32.4%, 39.6ヵ月, pT3; 37.2%, 25.0ヵ月であった. 初発再発部位別再発率と平均再発期間は肺;46.7%, 40.6ヵ月, 骨; 17.8%, 26.1ヵ月. 後腹膜臓器; 11.1%, 18.6ヵ月, 肝;6.7%, 38.0ヵ月, 甲状腺; 4.4%, 51.0ヵ月, 脳; 2.2%, 31.0ヵ月, 多臓器転移: 6.7%, 48.0ヵ月であった. pT1およびpT2再発例は, その多く (89%) が経過観察中に無症状で発見されたが, pT3再発例では約半数 (44.4%) が転移による症状で発見された (p=0.0157). pT1, pT2における初発転移部位の内, 肺転移の占める割合は50%以上を占めていたが, pT3では6例33%とやや低い頻度であった. しかし, pT3では後腹膜臓器と肝への再発率がpT1, pT2よりも高い傾向を認めた.
(結論) 悪性腫瘍の術後経過観察は再発の早期発見が主目的である事はいうまでもないが, 同時に cost-effectiveness を重視したものでなくてはならない. 今回の検討では腎細胞癌の再発の危険性と再発部位は, 原発巣の病期に依存しており, 病期が進行する程再発率は増加し, 再発期間は短縮する傾向を認めた. 従って, 術後の経過観察は病期別に考慮されるべきであると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top