2002 年 93 巻 3 号 p. 457-462
(目的) 腎細胞癌に対する担癌患者のリンパ球と健常者のリンパ球の細胞傷害活性度を比較することにより, 腎細胞癌の抗原性とその抗原認識機序について検討した.
(方法) 腎細胞癌に対する免疫応答の解析にはリンパ球腫瘍細胞混合培養試験と51Cr放出試験を行なった. 試験では刺激細胞として腎癌細胞を, 応答細胞として担癌患者 (自己) または健常者 (非自己) の末梢血リンパ球を, 標的細胞として51Cr標識した腫瘍細胞または担癌患者の末梢血リンパ球を用い, 標的細胞添加後の51Cr放出量を測定して細胞傷害活性度へと換算した. また, 応答細胞および刺激細胞に発現する表面抗原の解析は抗体阻害試験を用いて検討した.
(結果) リンパ球腫瘍細胞混合培養試験では, 非自己リンパ球からのみ腫瘍細胞に対する細胞傷害活性が誘導されたが, この細胞傷害活性は末梢血リンパ球の抗CD8抗体処理, または腫瘍細胞の抗 HLA class II 抗体処理により阻害された. また, 腫瘍細胞に対して高い細胞傷害活性を示した非自己リンパ球は, 担癌患者の末梢血リンパ球に対しては傷害活性を示さなかった.
(結論) 一部の腎癌細胞には, 非自己のCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球の認識しうる HLA class II 拘束性の腫瘍特異的抗原が発現している可能性が示唆された.