日本泌尿器科学会雑誌
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尿路上皮内癌の検討
上部尿路尿細胞診陽性症例を中心に
北村 康男小林 和博鈴木 一也斉藤 俊弘小松原 秀一渡辺 学
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2002 年 93 巻 5 号 p. 621-626

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抄録

(目的と背景) 尿路上皮内癌が疑われた症例において, 膀胱の無作為多部位粘膜生検 (膀胱生検) に加えて, 上部尿路細胞診検索の価値をあきらかにし, さらに上部尿路細胞診陽性者に対する Doublu-Jカテーテルを用いたBCG膀胱腔内注入療法の有用性を評価することを目的とした.
(対象と方法) 自然尿の細胞診にて2回連続 class Vの診断が得られ, 膀胱に腫瘍を認めず, かつ画像診断にて上部尿路に異常を認めない33症例を対象として, 膀胱生検と上部尿路の細胞診を検索した.
(結果) 膀胱に異常を認めない7例での上部尿路細胞診は class IIIが2例, class Vが5例であった. 7例の膀胱 dysplasia 症例では class I, II, IIIが1例づつ, class Vが4例であった. 19例の膀胱上皮内癌症例では上部尿路細胞診 class IまたはIIが8例, class IIIが3例, class Vが8例であった. 部位別にまとめると, 膀胱の上皮内癌単独が11例, 上部尿路上皮内癌の単独が9例, 膀胱と上部尿路の上皮内癌の合併が8例であった.
また上部尿路細胞診陽性17症例中13例に Double-Jカテーテルを留置後, BCG膀胱腔内注入療法を施行した. 11例では尿細胞診の陰性化を認めた.
(結論) 尿路上皮内癌においては, 上部尿路の細胞診陽性所見は高頻度に認められ, 膀胱の生検だけでなく, 上部尿路の検索は必須と思われた. Double-J カテーテルを利用した上部尿路上皮内癌に対するBCG膀胱腔内注入療法は安全かつ効果的であった.

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