2004 年 95 巻 1 号 p. 63-66
遺伝性非ポリポージス大腸癌 (Hereditary nonpolyposis colorectal cancer: HNPCC) は常染色体優. 性遺伝を示す疾患で, 大腸以外に尿路を含む他臓器悪性腫瘍を合併することが多い. 今回, われわれはHNPCCに合併した異時性両側尿管腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は51歳, 男性. 他院にて結腸癌 (Stage IIIb) の経過観察中に排泄性尿路撮影にて左水腎症がみられたため当科を受診した. CTにて左下部尿管に腫瘍を認め, 尿細胞診は Class Vであった. 左尿管癌 (cT1N0M0) の診断にて左腎尿管全摘除術を施行した. 病理組織は transitional cell carcinoma, grade 2, pT1であった. 術後4ヵ月目に肉眼的血尿が出現し, 逆行性腎盂造影にて右腎盂尿管腫瘍がみられ, 生検にて transitional cell carcinoma, grade 2と確診した. 4回のBCG注入療法後, 残存した右腎盂腫瘍に対して laser ablation を施行した.
本症例はHNPCCの Japanese clinical criteria のB群に該当すると考えられる. また, 大腸癌の多発する家系であり, さらにHNPCCの責任遺伝子とされているhMSH2の変異が確認された.
HNPCCに合併する尿路系腫瘍につき文献的考察を併せて行った.