2007 年 98 巻 3 号 p. 573-575
我々は, 膀胱憩室内に発生した小細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は64歳男性. 尿閉を主訴に来院. 膀胱鏡検査で右側壁の憩室内に乳頭状腫瘍を認め, 膀胱憩室内腫瘍との診断で膀胱部分切除術を行い, 腫瘍を憩室ごと切除した. 病理組織診断は小細胞癌と移行上皮癌の併存している所見であり, 前者が優位であった. 膀胱憩室内腫瘍は, 診断が困難な上に憩室壁が菲薄で壁外浸潤をきたしやすいため進行癌になりやすく, 一般に予後不良である. 一方, 膀胱小細胞癌は極めて予後不良な, 稀な膀胱癌組織型として知られている. 膀胱憩室内に発生した小細胞癌は極めて稀で, 我々が調べた限りでは本症例が本邦2例目である.