視覚の科学
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総説
立体視における個人差
佐藤 雅之
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2014 年 35 巻 2 号 p. 33-37

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抄録

立体視には大きな個人差があるが,その詳細は明らかではない。本稿では,最近我々の研究室で行った人間の奥行き知覚に関する三つの実験について報告する。実験1では,若年層を中心とする健常者118名の立体視力を測定した。半数の被験者は立体閾が20s以下であったが,13%の被験者は測定不能であった。実験2では,奥行き情報の統合の際に被験者が網膜像差情報と遠近法情報に与える重みを測定した。遠近法情報の重みは0~1.5の広い範囲に分布し,立体閾との相関は低かった。実験3では,大きな網膜像差による奥行きの知覚における運動の効果を測定した。実験3の結果は実験1と実験2で得られた基礎的な特性で説明できる部分もあるが,それ以外の要素も寄与していることが明らかになった。これは,周辺視野における立体視力や奥行きの傾斜に対する感度などが個人の立体視能を記述するための独立した変数であることを示唆している。

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© 2014 日本眼光学学会
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